大原美術館や足立美術館に行った時に、「私設美術館って面白いな」と思いました。
もちろん海外の有名な美術館やテーマを持って開催される美術展もその時だけしか観られないという稀有さはあるのですが、私設美術館は何度も通いたくなる魅力がある。
最近そういうものの面白みについて考えるようになりました。
感想
そんな時に、原田マハさんの「常設展示室」を読むことになりました。
大学時代に美術史を専攻されて、実際に美術館でも勤務されたことのある原田マハさんだからこそ描ける物語の詰まった一冊です。
原田マハさんは「ジヴェルニーの食卓」を以前読んだことがあります。
こちらは、各画家に近い人の視点から描かれたフィクションです。
わたしはこの「ジヴェルニーの食卓」を読んで、ドガやマティスを知りました。
丁寧に描写された風景や絵画へ向けられた厳かで静謐な視点が、画家を、その絵画をとても雄弁に語る装置として機能している作品です。
マティスは今回の「常設展示室」でも登場するのですが、原田さんはきっととてもお好きなのだろうなと感じます。すごく、愛情が感じられる。
マティスは原田さんの通した目でわたしは知り、特別な気持ちで鑑賞するようになりました。
このあいだの大原美術館でも、マティスの作品が一点あって、初めて実物を見ることができて、とても心踊る体験になりました。
この「常設展示室」は、主に美術の仕事に携わる人の視点から描かれています。
そういう意味で、目の肥えた人たちが、知識も鑑賞する力もありながら、常設展示室で改めてその絵を通して、あるいは契機として、いろんな思いが描かれています。
絵画は、ある意味で”出会い”なのだろうと思います。
そこには色々な目に見えるものも、そうでないものも溢れていて、観た人によって受け取るものは違う。ありとあらゆる種類の豊かさがそこにはある。
芸術の面白みを、言葉で伝えるのってむずかしい。そのむずかしいものを、物語というかたちでわかりやすく提示してくれる。
わたしは絵画への教養も乏しいのですが、絵を観るのは好きなので、また絵を観に行きたいなと思いました。
あとこの本を読んで、初めて海外の美術館を訪れるのも悪くないなと思いました。
本もまた、出会いです。
関連情報
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