梨木香歩再考 - – 僕は、そして僕たちはどう生きるか

話題の吉野源三郎さんの「君たちはどう生きるか」を未読の状態でこの感想を書いています。

※後日談

その後「君たちはどう生きるか」も読んだのですが、そちらの感想を書くタイミングを逃してしまいました。。。

 

そのため、この梨木さんの「僕は、そして僕たちはどう生きるか」は「君たちはどう生きるか」ありきの、梨木さんなりの回答? なのかなと、想像を膨らませながら、しかしわたし自身はまだ「君たちはどう生きるか」の内容を知らない状態での、感想になります。

 

 

最近はあまり読んでいなかったけど、梨木香歩さんは、結構好きな作家さんのひとりです。

なので、若干梨木さんに寄る意見となるかもしれません。あらかじめご了承ください。

 

梨木香歩さん読書歴

好きな作家さんと言いつつ、梨木さんの本を読むのは久しぶりです。

昨年「西の魔女が死んだ」を再読した以来かな?

一時期けっこう読んでいたのですが、梨木さんの独特のポリシーのようなものに、共感しつつもついていけなくなって、足が遠のいていました。

自然のものに対する畏敬の念を感じさせる自然派な生活様式とか

文章の底に漂う、自分や世間、物事に対して真摯に向き合おうとする姿勢とか

決して押しつけているわけではなく、けれどきっと著者自身には信念があって、それが文章の隅々にまで行き渡っている。

 

共感できないわけではないのです。むしろめっちゃ共感します。

 

でも、わたし自身は立派な人間ではないので、ときどき疲れちゃうんですよね。

 

本から何を得るかはその人によるし、著者自身が自分の考えを押しつけているわけでは決してないのです。

でも、一時期遠のいていたわたしは、そういうことに真摯に向き合うのに疲れちゃったのかもしれません。自分のことで手いっぱいだったからかな。

 

それについては、いずれどこかで考えてみようと思います。

 

 

読んでみようと思ったきっかけは、中学生にオススメの本は? と聞かれた時に、思いついたのが梨木香歩さんの「裏庭」だったからです。

 

個人的には村上春樹さんを押すのですが、中学生は読む子は読めるけど、まだ早いかも?

梨木さんの「裏庭」は、量こそ分厚いけれど、文章は読みやすく、一見すると冒険ものでとっつきやすく、それでいて奥が深いストーリーです。「西の魔女が死んだ」よりも直接的な教育要素が少なくて(あれはあれで名著なんだけれど)、ファンタジーなのも良い。

で、そういえば梨木さん、と探していたら、冒頭に紹介した「僕は、そして僕たちはどう生きるか」が出ていることを知りました。

久しぶりに「ああ、梨木さんだ」と衝撃を受けました。

 

あれです、十数年ぶりに旧友と突然再会して、昔の思い出が走馬灯のように押し寄せるような感覚です。

梨木さんらしさがすごくあちらこちらに漂っている。

 

本を通した、「ただいま」「おかえり」のやりとり。

でも、その優しさは、ただ優しいだけではなくて厳しさの伴った芯のある優しさです。

ちゃんと真剣に向き合わないといけないと、やっぱり思ってしまう。
わたしは怖くなったのかな。

真摯に向き合うことは、こちらの真剣さが試されます。

 

ちょっとした感想

そこから逃げていたのかな。ある意味では。

日々を生きるのに、とにかくなんとか生き延びるのに一所懸命過ぎて、そうすると、余裕がなくなってしまうのです。

 

やっと、ひとまわり成長して、戻ってこれたのかな。

コペルくんたちのやりとりを見て、そう思いました。

 

コペルくんとも似ているかもしれませんね。

そこには、非常に繊細さが求められます。

 

急ぎ過ぎて、取りこぼしてしまったところにいる人たちを、見逃さないように。

自分が傷つく一方で、自分もまた無自覚に誰かを傷つける存在でもあること。

その自覚を持って、何を見つめていきたいと自分は思うか。

 

以前紹介した菅野先生の「友だち幻想」で、菅野先生は、本は対話する存在だと書いておられました。何度も何度も対話を重ねていくことが大切だ、と。それは人間関係にも通じていくのだろうと。

うーん、まさしくその通り。

 

 

このタイミングで、わたしはやっと対話する心づもりができるようになったのです。

でも、一方で、だからこそ、この本は若い読者にも読んでほしいと思える本でした。

 

菅野先生も仰るように、対話は一度ではなく、何度も重ねていくものです。

きっと、中学生くらいのわたしが読んだら、いまの大人のわたしほど、この本のエッセンスは受け取れなかっただろうなと思います。

誤解を与えかねない表現もあります。(ちゃんと読めば、もちろんそんなことはありません)

でも、例えば中学生なら中学生の、高校生なら高校生の、その時のその人の感性で読めばいいと思います。

 

 

もしそこで、ほんのひとかけらでも得られたら、それは大切な財産となっていきます。

また、もう少し大きくなったときに読むと、新たな発見を得るでしょう。

これは大人でも同じです。

何度も読み返してほしいと思える本です。

 

 

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