天王寺へ行く用事があったので、ついでに気になっていたギュスターブ・モロー展へ行ってきました。
ハルカス美術館(あべのハルカスのなかにある、美術館です)で、9月23日まで開催されています。
ギュスターヴ・モロー
ギュスターヴ・モローは19世紀末のパリで活躍した画家(1826~1898)。
このモロー展は、パリにあるギュスターヴ・モロー美術館に所蔵されている約100点の作品が展示されています。
ギュスターヴ・モロー美術館は、モローの生家を、モロー自身が生前に寄贈した、まさにモローのモローによるモローのための美術館です。
本家パリのモロー美術館には、デッサンなどを含めてものすごい数が展示されているそうですよ。
わたしはモローの作品を見るのは初めてじゃないかな。
いつもは大きな美術館の展覧会に行くことが多いので、ひとりの画家に絞った展覧会に行くって初めてかもしれません。
モローの魅力がぎゅっと詰まったモロー展で、わたしは初めて見る世界にすっかり虜になってしまいました。
Ⅰ モローが愛した女たち
はじめは、モローの自画像が出迎えてくれます。
こちらは、モローの母ポーリーヌと、恋人アレクサンドリーヌのスケッチがたくさん展示されています。
モローを語る上で、このポーリーヌとアレクサンドリーヌの存在は欠かすことのできない存在です。
モロー自身は生涯独身で、母と一緒に暮らしていた(それが現在のモロー美術館)そうなのですが、すぐ近くに恋人アレクサンドリーヌも暮らしていたそうです。(モローの父親は、先に亡くなったそうです)
モローはこの母と恋人をとてもとても、大切にしていたそうです。
それは、たくさんのスケッチからうかがい知ることができます。
鉛筆で描かれたスケッチ画の微細なこと。
絵の構想を、耳の遠くなった母のために書いたメモの、細やかなこと。
わたしは、ものすごく不思議なんですが、初めて「なんて繊細な人(絵)なんだろう」と思ったのです。
これまで絵を見てきてそんな風に感じたことなかった。
Ⅱ 《出現》とサロメ
続いてサロメをテーマにした作品が、これでもかと続きます。
ポスターにもサロメの作品が使われていますよね。(ちなみにアイキャッチの画像は「《出現》」です)
当時、パリでのサロンに出展する作品。
そのための構想のデッサン。
派生する絵画。
モローは、この「サロメ」というテーマに、ものすごい熱量をかけています。
今回の展覧会ではごく一部なのですが、デッサンだけでもすごい量があるそうです。
何度も何度も、幾重のバリエーションでサロメを描いています。
Ⅲ 宿命の女たち
「ファム・ファタル」男性を誘惑し、破滅に導く美しき宿命の女。
主に神話を主題に、様々な女性が描かれています。
この辺は、元の神話などを詳しいとさらに楽しめるかなと思います。
「ファム・ファタル」という言葉を今回わたしは初めて耳にしました。
「男性を誘惑し、破滅に導く美しき宿命の女」とだけ聞くと、さぞかし妖艶な美女かと思わせますが、なんというか、モローのそれは、そんな単純なものではないぞと。
確かに彼の描く女性は、とても美しい。神話的というか、俗っぽさが薄い。
官能的でもあるけれど、でも神秘的でもあって、なんというか、奥深いのです。
いま思った。そう、アニマ。アニマです。この言葉がいちばんしっくりくる。
Ⅳ 《一角獣》と純潔の乙女
最後は、これまでの男性を惑わす女性とは打って変わって、純潔の乙女で締めくくられます。
でも、なんというか、モローは純潔の乙女も「ファム・ファタル」も、通じるところがある。
つまり、ひとことで簡単に言い表せない複層的な女性像なのです。
そういう意味で、純潔の乙女もバリエーションのひとつでしかない。
今日のいちまい:レダ
私はいつも展覧会に行くと、「自分で選ぶ今日のいちまい」があるのですが(自分のなかで、「これだ!」と思う一点)、今回は「レダ」でした。
レダはギリシア神話に登場する女性。
白鳥に化けたゼウスがレダを誘惑しにきます。
このモチーフは今回の展覧会で3点ありましたが、わたしはなぜかそのうちの1点、少し青みがかった大きな油彩画がなぜか妙に、妙に引かれてしまいました。
絵はがきが売っていたら欲しかったのですが、残念ながらレダのもう1枚のほうの絵は絵はがきになっていましたが、わたしの気に入った作品はありませんでした。残念……
ちなみに、レダとゼウスの子どもは、かの有名なトロイのヘレンだそうです。
結び
今回は行こうか行くまいかけっこう迷っていたのですが、勇気を出して行ってみて良かったです。
新しい世界に出会えました。
いままで印象派の絵がとても好きだったのですが、違うベクトルでモローの魅力にはまりました。
これを機会に、本棚の奥にしまっていた「サロメ」を読もうと思います……
関連情報
▽ハルカス美術館のギュスターブ・モロー展情報
ハルカス美術館では、9月23日まで開催されているそうです。
関西にお住いの方、まだ間に合いますよ!
そして、10月1日からは福岡市美術館で開催されるそうです。
▽アニマについては、こちら