行ったのは緊急事態宣言前の時期なのですが、記事に上げる時期を探していたら緊急事態宣言が出てしまって、ブログに掲載するタイミングを見失いました。
でも、自分のなかで大事な体験なので、やっぱり文章にして残しておきたい。
というわけで、今回紹介する「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」はもう終了しています。
覚え書きのようなものですが、お付き合いいただけると嬉しいです。
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
ロンドン中心部にあるロンドン・ナショナル・ギャラリーは、英国を含む幅広い地域と時代のヨーロッパ絵画を網羅した美術館です。13世紀から20世紀初頭までの約2300点の作品が所蔵されています。
こちらの美術館、作品の貸出に極めて厳しいらしく、英国外で所蔵作品展が開かれたことは、200年近い歴史のなかで一度もなく、なんと今回がはじめて。
つまり、今回展示された約60点の作品は、すべて日本初公開だったのです。
ゴッホのひまわり、フェルメールなどの貴重な作品を含め、厳選された作品が一堂に介しました。
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こちらの展覧会、一昨年に告知されていたときから楽しみにしていました。(アイキャッチは、一昨年の告知のもの)
しかし、コロナで東京・大阪ともに延期。
東京は6月18日~10月18日、大阪は11月3日~1月31日までに変更になりました。
入場には事前予約で時間帯ごとの入場者数が制限されました。
(当日券も、余裕があれば入手することはできました)
わたしが行ったときは、そこまでの混み具合ではなかったので割とゆっくり鑑賞を楽しむことができました。
絵を見て癒される、美術展での体験
絵画展に行くのはほんとうに久しぶり。
しかし、今回は(今回も?)なんだかちょっとしんどかった。
梅田から国立国際美術館まで歩いたせいかもしれないし(片道30分くらい)、普段より多くはないとはいえ美術館に行くことに緊張していたせいかもしれない。(緊急事態宣言前とはいえ、コロナによる緊張は高まってきた、そういう緊張感もあります。後ろめたさのような気持ちも)
だから絵画を見て楽しむ反面、調子は良くなかったのです。ずっと行きたいと思っていて、やっと念願叶っての美術展だったのに。
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あとで紹介する、ジョン・コンスタブルの「コルオートン・ホールのレイノルズ記念碑」に魅せられたときも、絵には惹きつけられるんだけど、気分は晴れていなかったのです。
むしろ気持ちは、現状に対する厳しい気持ちが強まりました。
そういう寒いなか厳しいものに向き合う気持ちが、この絵画に惹きつけられたのかもしれません。
絵に込められたバックグラウンドとは全く関係なく、単に絵を見て受け取ったものなんだけれど。
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そして、すごーく不思議なことに、癒しの瞬間がやってきました。
わたしの好きな印象派の絵画が並んでいたコーナー。
今回のロンドン・ナショナル・ギャラリー展は、モネやルノワール、セザンヌといった印象派の著名な作品も一通り揃っている貴重なものでした。
この最後の「イギリスにおけるフランス近代美術受容」のコーナーは、わたしにとってまさしく滋養になるものでした。
むくむくと、こころの奥のほうから泉のように明るく柔らかいエネルギーのようなものが湧いてきたのです。
もともと印象派は好きだったんだけど、今回改めて”好き”というよりも、”波長が合う”という風に感じました。いつまで見ていても飽きないのです。
ちなみに、残念ながらゴッホは”波長が合わない”です。
昨年、あえて苦手なものに触れてみようとゴッホ展へ行ったのですが、それはそれで面白い体験になったけど、やっぱりゴッホは合わないなあと感じました。
ゴッホはエネルギーがあります。人々を魅了するのも頷けます。類い稀な画家です。
でも、わたしはどうも波長が合わない。気がする。
今回の美術展では、ゴッホの「ひまわり」は大トリを務めていましたが、わたしにはそこまで惹かれませんでした。
むしろ近くに行って見るほどには、その日はエネルギーが足りなくて無理という感じ。
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あと印象派ではないんだけどフェルメールは普通に好き。フェルメールは数が少ないから、見られるだけで貴重です。そして日本初上陸ということは、フェルメールのこの作品も日本初です。
しかししかし、今回惹きつけられたのは、やっぱりこのあと紹介するジョン・コスタンブルの「コルオートン・ホールのレイノルズ記念碑」でした。
モネもルノワールもピサロもセザンヌも、今回たくさんの贈り物をもらったのですが、「どうしても選ぶのならこの一枚だな」という基準は、これまた”好き”や”波長が合う”とは違った次元のものなのです。
たぶんこれは、そのときの自分の状態によっても左右されると思う。
違うタイミングで、今日とはまた違う自分が行ったら、違う一枚を選ぶのかもしれません。
美術展は、いつも一期一会なのだと思います。
今日の一枚:「コルオートン・ホールのレイノルズ記念碑」ジョン・コンスタブル
いつも美術展に行くと、その日の自分のとっておきの作品をひとつ選びます。
これは、好き嫌いとか好みだけじゃなくて、「なんかよくわからないけど無性に惹かれる」ものです。
今回はジョン・コンスタブルという19世紀のイギリス画家の作品です。
ウィリアム・ターナーと並ぶ、19世紀を代表する風景画家なのだそうです。
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樹々に囲まれたなかに、表題の碑があって、その前に一頭の雄鹿がいます。
全体として色調は暗め。でも樹々の描き方がとても緻密で、静かな迫力があります。
これはわたしの主観なのですが、厳かな雰囲気で、雄鹿もどこか神聖な生き物のように感じられました。(作品の意図は違うかもしれないけれど)
見ると明るく幸せな気持ちになるというわけではないんだけれど、きゅっと引き締まった気持ちになり、でも奥のほうに希望のような何かがあるような、そんな気持ちになります。
完全に主観です。うまく言い表せないんだけど、いまの自分の心境には何か重なるものがあったのだろうと思います。
▷▷「コルオートン・ホールのレイノルズ記念碑」は公式ホームページから見ることができます。
結び
自分のなかに起こった体験を文章にしてみたんだけど、書いている本人が「うまく言い表せないなあ」という感覚があるので、もし読んでおられる方がいたらもっとわかりにくいんじゃないだろうかと思います。
わたしはいつもこんな感じで、知識をもとに見るよりも自分の体験から見ている人です。もっと知識も入れたほうがいいんだろうけど、そっちにはエネルギーが向かないんだな。
そして時間をかけて見るので、絵画鑑賞は基本的にいつもひとりです。誰かと行くとペースが合わないのね。(体験を誰かと分かち合いたい気持ちはあるんだけど……)
その人によっての楽しみ方があると思います。正解はひとつじゃなくていい。
ここまでお付き合いくださいまして、ありがとうございました。
関連情報
▽ロンドン・ナショナル・ギャラリー展公式サイト
▽The National Gallery, London公式サイト(英語です)
The Nation's Gallery. The story of European art, masterpiece…
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