タイニー・ハビット(小さな習慣)は世界を変える『習慣超大全』BJ・フォッグ

正式名称は『スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法 習慣超大全』です(長い)。

よくある習慣の本?」と思いきや、なかなかよくできた本だと思いました。

文章は平易で読みやすいけどなにせ分厚いので(付録まで入れると549ページ)、今回は本書からわたしが読み取ったエッセンスをまとめてみました。

 

※本書の引用の赤字(太字)部分は、本文の表記をそのままなぞらえています。

はじめに:年末年始のエピソード

詳しい顛末はnoteに書きましたが(本書のミニ感想版です)

今年の年末年始休暇中、わたしは思ったよりも読書ができませんでした。

 

昔から休みの日は「あれもしよう」「これもしよう」と思いながらも、できないことが多かったものです。

そうすると、1日の終わりに自己嫌悪に陥るんですね。

そして「なんで自分はこんなにできないんだろう」と自分を責めてさらに負のループにはまっていくわけです。(自分を責めたところでできるわけもなく)

 

本書はそんなあなたにぴったりです。(わあ、なにかの通販番組みたいだ・笑)

この本には、そういう人がなぜうまくいかないかが説明されています。

 

習慣にするのに「モチベーション」に頼るとうまくいかないからです。

つまり「できない自分=やる気のない自分」だという図式ではないのです。

 

わたしも最近では、できないときは諦めつつ「ちょこちょこやろう」と心がけるようになっていました。

長時間集中したり時間を作ったりすることが自分にはむずかしい(≒ちょこっとずつやるのが自分には向いている)ことが長年の経験で少しずつわかってきたからです。

 

本書は、それをさらに後押しする内容になりました。

本書では、わたしが思っていた以上に「小さくはじめよう(タイニー・ハビット)」と説いています。

 

タイニー・ハビットの構造

タイニー・ハビットのポイントは次のとおりだ。
〈あなたが望む行動を1つ選び、それを「小さい行動」に分類し、生活の中で自然に組み込める場所に植え、成長させる〉
長期的な変化を望むなら、小さいことからはじめるのが最善だ。

(P12 INTRODUCTION 変化は簡単に起こせる(しかも楽しい))

 

自分を変えたい」と思ってもなかなかうまくいきません。

本書では、それを「小さい行動」まで分解・設定することを最も大切にしています。

 

例えば、運動の習慣を取り入れたいのなら「トイレの後に壁で腕立て伏せを2回する」とかね。(この例えは実際に著者が実践していたものです)

 

そして、タイニー・ハビットを成功させる仕組みは、さらに構造化されたところにあります。

タイニー・ハビットの構造

①アンカーの瞬間
すでに習慣になっていることや、何かの出来事(例:電話がかかってきたとき)をアンカー(錨:いかり)にする。この「錨(アンカー)」によって、小さい行動」をすることを思い出す。

②小さい行動
身につけたいと思う新しい習慣を簡単にした行動。「アンカー」の直後に、この「小さい行動」を実践する。

③祝福
ポジティブな感情を生み出す行動。
「小さい行動」を取った直後に自分を「祝福」する。

 

ここで先ほどの例で説明すると

①トイレに行った後(アンカー)
②腕立て伏せを2回だけ行う(小さい行動)
③「よくできた!」と自分に言う(祝福)

という構造になります。

 

え? そんな簡単なことでいいの?」と思うかもしれません。

そんな簡単なことがいいんです。

 

アンカーを最初に設定するのは「新たな習慣をわざわざつくる」のではなく、いつもやっていることにほんの少し(ここ重要)プラスアルファをすることで、無理のない設定ができるからです。

 

例えば「腕立て伏せを毎日10回する」だと、その時間をわざわざつくらないといけません。

ほんの数分でも、意外と面倒になって続かない可能性大です(特に、運動を習慣にしていない人にとっては)

 

でも、「トイレのあとに2回腕立て伏せをする」だと、1日のなかでトイレに行かない日はありませんから、1回の量は少なくても、結果的に「わざわざ10回する」よりも成功率が高くなるのです。

「わざわざトイレに行くたびに2回もできないよ」という人は、「アンカー」や「小さい行動」の設定が、自分には合っていないことになります。

自分に合う設定をつくっていけば良いのです。

 

行動を3つの要素で分析する

ある行動が起きるのは、MAP(モチベーション・能力《アビリティ》・きっかけ《プロンプト》)が一定の条件を満たしたときだ。

(P48 CAPTER1 行動を分析する 「3つの要素」が行動を生む)

 

これ、ものすごくわかりやすいんだけど(著者は「フォッグ行動モデル」と呼んでいます)、ものすごく盲点だった。

 

行動を起こすのには、「モチベーション(やる気)が必要」とか「きっかけさえあれば変われるよ(行動に移せるよ)」とか、使い古された言葉です。

 

全部合わさって行動に結びつくんだよ。モチベやきっかけだけに頼っていちゃダメだよ!

 

ちなみに真ん中のA(Ability=能力)は、バリバリできるものでなくて良いんです。

自分が「これくらいならできるわ」と思うところがポイントです。

 

やっているうちに能力は上がっていきます。例えば2回だった腕立て伏せが5回→10回と増えるようなイメージです。

 

モチベーションはあてにならない

困ったことに、大半の人が、モチベーションこそ行動変化の真の原動力だと誤解している。「報酬」や「インセンティブ」といった言葉があまりにも頻繁に使われるため、適切な人参さえあればどんな習慣でも身につけられると誰もが信じている。そんなふうに考えるのは、明らかなまちがいだ。

(P92 CHAPTER2 〈モチベーション〉編 「黄金の行動」をマッチングする)

 

これ、過去の自分に教えてあげたい。

わたしができないのは、やる気(モチベーション)が足りないからだ」と何度自分を責めたことか。

 

モチベーションは複雑で日々移ろいやすいものなのだそうです。

先ほどの行動の3要素でも、モチベーションがもっとも扱いにくい(あてにならない)ものです。

 

しかし、モチベーション自体が悪いわけではないのです。

 

本書では、自分が「こう変わりたい」と思っていることに対して、いくつも行動の選択肢を挙げて振り分けること(「フォーカス・マップ」をつくる)を推奨しています。

 

そのなかで「したい」と「できる」が一致したものは、モチベーションがとても高く実行できる可能性が高くなります。(フォッグさんの「黄金の行動」理論・笑)

 

「したい」と「できる」が一致した行動、それこそが実行できる可能性がもっとも高い行動である。その行動こそが、習慣を成長させるもっとも肥沃な土壌なのだ。

(P137 CHAPTER2 〈モチベーション〉編 「黄金の行動」をマッチングする)

 

つまり、モチベーションをどう行動と結びつけるか、ですね。

 

例えば運動の習慣を取り入れたいと思う場合、選択肢をたくさんつくってみて「これならできそう」と「これはやってみたい」が合わさったものは、最強だということです。

 

祝福(自分を褒めること)の大切さ

あなたが本書からひとつだけ学ぶとすれば、「成功を祝福すること」であってほしいと思う。

(P300 CHAPTER5 定着させる 祝福で脳をきらめかせる)

 

習慣を定着させるのに、もっとも大切なことは「祝福」であると著者は述べています。

 

「ごほうび」は、例えば「腕立て伏せ2回の習慣が1週間続いたら、好きな映画を1本見よう」では、効果が低いのだそうです。

というのも、そこにはタイムラグがあるから。

 

それよりも、もっと気軽に、その場ですぐに(しかもコスト0!)できることのほうが、ずっとずっと効果大なのだそうです。

 

祝福とは、簡単に言えば「その場ですぐに自分で自分を褒めること」

その方法は、人によります。小さくガッツポーズをするのが良い人もいれば「やったね!」と言うのが良い人もいます。

 

大切なのは「恥ずかしがらずに自分で自分を祝福すること」(もし、身近に応援してくれる人がいれば、一緒にその場で褒めてもらえるのも良いそう)。

そして「祝福することで、ちょっと気分が良くなること」

 

心地よい気分には、新しい習慣を脳に定着させる働きがある。祝福は驚くほど効果的で、手早く簡単にできて、しかも楽しいということがわかるだろう。

(P249 CHAPTER5 定着させる 祝福で脳をきらめかせる)

 

これの良いところは、お金がかからないことと、手近で行いやすいこと、自己肯定感を上げるのにも打ってつけということ。挙げると枚挙にいとまがありません。

 

おまけ:タイニー・ハビットは世界を変える(かもしれない)

本書の最後のほうでは、他人(もしくはグループ)の行動を変えることについても触れられています。

これは、相手に変わることを強要することではなく、結果的に全体がポジティヴな方向に変わっていくための働きかけです。そういう意味で、タイニー・ハビットの応用編と言えます。

 

 タイニー・ハビットと行動デザインを使えば、他者の人生にもポジティブな力を与えられる。グループを変えるには、思いやりとスキルのある人物がたった一人いるだけでいい(あなただ!
 ただし、行動デザインによってグループのカルチャーを変えられるからといって、国家の変革から始めるのは無謀だ。自分自身の変化のスキルを磨いたら、職場のチームや家族など、できるだけ身近なところからはじめよう。

(P442 CHAPTER8 一緒に変わる みんなで人生を変える)

 

わたしが日々なんとなく考えていることに近いことが表現されていて、面白いなと思いました。

 

世界が変わるのには、政府など大きな権力を持つ一部の人々が決定すること(トップダウン)だけではなく、小さいけれどひとりひとりの意志や行動から起こること(ボトムアップ)にも価値があるのではないか。

だから、わたしが(私たちが)、日々何を見て何を知り何を選んで行動するかが大切。

 

飛躍しすぎかもしれませんが、タイニー・ハビットはそんな一端を担うのかもしれません。

 

行動デザインは自分が理想像に近づくためにあり、同時に、私たちが暮らしていきたいと思うような家族やチーム、コミュニティ、さらには世界を築くためにあるのだ。

(P491 CHAPTER8 一緒に変わる みんなで人生を変える)

 

結び

本書には、今回取り上げたところ以外にも、タイニー・ハビットを定着させるためのさまざまな知恵が記されています。

より詳しく知りたい方は、実際に手にとって読んでいただけると良いなと思います。

 

関連情報

▽スタンフォードつながりで。本書と真逆のベクトルのお話です(笑

この本を読んだころよりは、いろんなことに”ちょっとずつ”取り組めるようになりましたよ。でも、たまにはこういう大らかさを持つことも大事だなあとも思います。

 

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