「海堂尊さんの本を順番に読んでいこう」で今回手に取った本がこちら。
お恥ずかしながら、医療に詳しくないわたしは須磨久善先生のことを初めて知りました。
ノンフィクションの本になります。
須磨久善Dr.の簡単な略歴
心臓外科医。胃大網動脈を使った冠状動脈バイパス手術というオリジナル術式を考案。
日本人で初めて海外での公開手術も行なわれました。
ローマで教授を務めたときに出会ったバチスタ手術を日本で初めて手がけた。(その後バチスタ手術を進化させ「スマ手術」と呼ばれるように)
日本心臓病学会栄誉賞を受賞。
葉山ハートセンター設立に関わり(初代院長)、その後は心臓血管研究所スーパーバイザーを歴任。
感想〜イメージの力〜
凡人のわたしには考えも及ばない世界の方のエピソードで、「世の中にはこんなにすごい(素晴らしい)お医者さんがいるのか!」と平凡な感想しか浮かばなかったのですが(我ながらなんて浅い感想だろう…
ひとつ、印象に残ったことを挙げるとしたら。
それは繰り返し語られた「イメージの力」です。
手術を行なう際、須磨がもっとも重視するのはイメージである。
須磨がはじめに考えることは、悲観的なイメージであることが多い。あらゆる可能性を考えるとそうならざるをえないのだと須磨は言う。手技の失敗、器械の不調、予定した術野とのズレ、スタッフのエラー。あらゆる事態を想定すると、その考えはたいてい悲観的なものになっていく。しかし、そうしたネガティヴ・イメージ・トレーニングを行なうことで、すべての事象を自分の想定内の世界に封じ込めることができる。すると次第に須磨のイメージは、ポジティヴな方向に変わっていく。(P27 第1章 未来への扉を開く——公開手術)
「まずはイメージを掴むこと、です。イメージを持てれば、いろんなことが上手く回りはじめます」
(P95. 第5章 外科医になろう——少年時代から医学部生時代)
「外科手術の教育のための肝は何でしょうか」
場違いな私の質問に、須磨はシンプルに答えた。
「イマジネーション、でしょうね。すべての手術は、想像するところから始めるべきです。その次は、段取りのつけ方、ですね。これで外科医としての修養の大半は終わるはず。ところが現在の医療現場では、こうした教育を軽視し、そうした概念を持たずに教育をしようとしているんですから驚いてしまいます」(P191 解題 バラードを歌うように)
これは、凡人にも参考にできるところではないかなと思いました。
ちょうど最近やっていたアニメ「葬送のフリーレン」でも、「魔法はイメージの世界だ」ということが度々作品のなかで取り上げられていました。
イメージの力。
想像すること(イマジネーション)。
トップアスリートは本番前のイメージ・トレーニングを欠かさないと聞いたことがあります。
イメージの力は、実は想像以上に大きいのだろうなと最近思いました。
あと、須磨先生の手術前のイメージで、先にネガティヴ・イメージを想定することが、ポジティヴな方向に変わっていくことにも繋がるということ。
あらゆる悲観的な想定(イメージ)をすることで、最悪な事態を避けられるように、場合によってこころの準備、備えることにも繋がる。
イメージすることは、もちろんポジティヴな(うまくいく)イメージもそうだけど、ネガティヴなイメージも使い方次第では有用なのだと知りました。
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個人的な話になるので詳しいことは書けませんが。
自分でも、可能性の扉を閉ざして「自分にはこれはもう無理だろう」と思うことがありました。
でもある出来事をきっかけに、無理だと思うことにチャレンジしてみることにしたんですね。
そのときに役に立ったのが「イメージすること」でした。
それを試してみた自分はどうなるだろうとイメージしてみました。
そうすると、これまで無理だと思っていた自分がイメージのなかでは動くことができそうでした。
もちろん実際に動いてみると、また違ったエラーは出てくるでしょう。
でも、イメージのなかで動けて、「あ、これはやってみよう」と初めて思えました。
そして、そのイメージする力の効用は、意外と馬鹿にできないと実感しました。
逆に、新しい領域に一歩踏み出す自分がイメージできないときは、まだ無理(いまはむずかしい)のかなとも思いました。
もちろん全くの未開拓の領域は、イメージすることすらなかなかむずかしいのですが。
しかし、そうやって現実を一歩進める前の準備をするという方法があるということ。
もしかしたら、すでにご存知の方にとっては「何を今さら」といったことかもしれませんが。
わたしにとってはここ最近のホットな話題で、そこに今回紹介した本書が、ピタリと当てはまったのでした。
関連情報
▽ついでに。
フリーレンアニメ、続きも楽しみに待っています。
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