音楽を言葉で表現する「蜜蜂と遠雷」恩田陸

 

直木賞を受賞されて、「ちょっと読んでみようかな」と軽い気持ちで図書館に予約しました。いやあ、待ちました。3年かかりました。

待った甲斐は、十二分にありました。あまりに面白くて、3日あまりで読み終わってしまいました。めちゃくちゃ分厚いのに。

 

感想

読んでワクワクする本

読んでいるとき、ときどき笑みがこぼれていました。

本を読んでいて笑う体験って、興味深いです。

 

漫画を読んでいて、ギャグが面白いなあと笑う体験とは、似て非なるものです。こころが騒ぎ、踊るのです。「面白いなあ」の質が全然違う。もっと深いところで共振する感覚です。

 

そういう本に出会えるって、とても貴重な体験です。

最近では、「真説 孫子」や「近衛秀麿」を読んでいたときも似たような体験をしました。

 

とりねこブログ 

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  近衛秀麿 亡命オーケストラの真実 菅野冬樹著 東京堂出版   「真説 孫子」のときと同様、新聞の書評からたどりついた…

 

今年は当たり年ですね。

 

言葉で音楽を表現する

わたしは音楽の教養はほとんど無きに等しいです。

ピアノをちょこっと習っていたこともあるけれど、1年ちょっとで辞めてしまったし(なにせ母に習っていいの許しを得られたのが小学6年生だったので。6年からピアノを始めるのは遅すぎます)

高校では憧れのブラスバンド部に入ったけれど、どう見ても熱心な部員ではなかったし。

 

高校でブラバンに入っていたメンバーで、熱心な人はそれからもいろいろなかたちで音楽を続けている人もいます。

でもわたしは、実は音楽そのものがそんなに得意ではないのです。

好きなのかも、実は疑問。

 

音楽を好きな人からすれば、恐ろしく聴くもののレパートリーが少ない。

もちろん少しは聴きますが、聴かないときもあるし、なくても不自由しない、でもときどき聴きたくなる、そんな感じです。

 

だから音楽の話をするのは、とても苦手です。「好きな音楽は?」と訊かれるのはとても苦痛です。

「好きな小説は?」と訊かれるともう少し雄弁に語れるのだけれど、本のことを聞いてくれる人は滅多にいません。

 

そんなわたしなので、「蜜蜂と遠雷」も、音楽に対する造詣はないコンクール初心者として挑みました。(そもそもなんの話なのかも全然前情報を入れていなかったので知らなかった。恩田陸という名前だけの信頼感です。恩田陸さんの本は何冊か読んだことがあるので)

 

まずはじめの数ページの見出しに「??」です。

なんだ、これ?

 

コンクールの要旨と、主要登場人物の曲目。はじめは訳がわからないのですが、これが後からちゃんと効いてきます。

何度も見返して確認することになりました。

 

作品を通して伝わってくることは、「音楽ってすごい」この一言に尽きます。

 

でも、何がすごいって、この非言語の世界を、言語化して読者に共有できる力もだと思う。

 

ピアノも、音楽も、全然知らない人でも、ぐいぐいと引き込んでいく力があります。その引力や半端ないです。

そういう意味では、「小説もすごい」

 

音楽は人に与えられた言葉にならない贈り物で、それと同時に、言葉も人にしか与えられていない贈り物なんだなあと二重に思いました。

 

全然違うものなんだけれど、音楽と小説は、そういう意味では似ているのかもしれない。

世界に、音楽と言葉があって良かった。

 

結び

小説を読み終わってから、明らかにきっとこの作品の影響だろうけれど(笑)、家にあるクラシックのCDを聴く回数が増えました。

ちょうど折良く、ルービンシュタインの「大公トリオ」のCDを取り寄せたところだったので、これまで持っていたスーク・トリオと聴き比べています。

 

 

演奏家によって、同じ曲でもこんなに違うんだ、と感慨深く。

 

作品のなかで扱われている曲も、聴いてみたいなあと思うのですが、少しのものをじっくりゆっくり聴いていくタイプなので、全部は無理だなあ。

 

CDも発売されていますよね。

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△その後発売された短編集と、映画化されたのでその感想も(2020年8月追記)

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