久しぶりに展覧会へ行ってきました。
京都市京セラ美術館で開催されている「マリー・ローランサンとモード 1920年代パリ、女性たちは羽ばたいた——ココ・シャネル、マドレーヌ・ヴィオネも活躍」 です。
「マリー・ローランサンとモード」概要
(公式サイトの情報をもとに書いています)
ふたつの世界大戦に挟まれた1920年代のパリ。
様々な才能がジャンルを超えて交錯した、奇跡のような空間に、とりわけ2人の女性が目を見張る活躍をしました。
マリー・ローランサンと、ココ・シャネル。ふたりとも1883年生まれです。
女性的な美をひたすら追求したローランサンと、男性服の素材やスポーツウェアを女性服に取り入れたシャネル。
二人の活躍は、大戦後の自由な時代を生きる女性たちの代表ともいえます。
今回の展覧会では、マリー・ローランサンやココ・シャネルの活躍を軸に、ポール・ポワレ、マドレーヌ・ヴィオネなど時代を彩った人々にも触れながら、モダンとクラシックが絶妙に融合するふたつの世界大戦のはざまのパリの芸術界・モード界が紹介されています。
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今回の美術館では、いまは閉館して公開されていないマリー・ローランサン美術館(※)の貴重な絵画も展示されています。
※長野の蓼科で30年近く(1983年〜2011年)開館されていた、世界で唯一のマリー・ローランサン専用美術館でした。日本にそんな貴重な美術館があったなんて、すごいですね。
京都市京セラ美術館の北2階で開催されています。
昨年のポンペイ展でもお邪魔しましたなあ。
感想
展覧会の構成&見どころ
展覧会は3部+エピローグの構成です。
Ⅰ レザネ・フォルのパリ
Ⅱ 越境するアート
Ⅲ モダンガールの変遷
エピローグ
しかし、公式さんが提示されている「本展の見どころ」がわかりやすいので、そちらに沿って感想を書いてみたいと思います。
《本展の見どころ》
1)マリー・ローランサンの再発見
2)1910-1930年代のファッション
シャネル、ポワレ、ヴィオネらの活躍
3)カール・ラガーフェルドがよみがえらせたローランサンの色彩
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ちなみに、こちらの展覧会もいくつかの作品は写真撮影OKでした。
最近撮影OKの展覧会、日本でも増えてきましたね。
わたしは基本目に焼き付けておきたい(写真を撮ると鑑賞する集中力が削がれる)人なので、写真は撮ってないです。
公式サイトにもいくつか展示作品が掲載されていますが、気になる方はぜひ会場へ足を運んでみてくださいね。
1)マリー・ローランサンの再発見
マリー・ローランサンは、パリ生まれの画家。
パブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックなどとの出会いから、当初はキュピズムの影響が強かったそうですが、パステル調の淡い色彩と優美な女性らしいフォルムの独自の作風を描くようになりました。
当時、女性画家は少数派。しかも、男性画家の画風の踏襲が多かった時代に、あえて「女性らしさ」と前面に出して自分の作風を追求したローランサンは、女性の社会進出が進んだ1920年代のパリを象徴する存在でもあったかもしれません。
わたしもこれまで何度かローランサンの絵画を目にしたことがありますが、あの柔らかな画風はいかにも女性らしいなあと思いました。
でもそれだけじゃなくて、素人意見ですがローランサンという人の個性が出ている。一度見るとなかなか忘れられない画家さんです。
今回はローランサンの絵画がたくさん展示されていて、会場は華やかな雰囲気でした。
2)1910-1930年代のファッション シャネル、ポワレ、ヴィオネらの活躍
わたしはファッションについてはかなり疎いので、あまり語る言葉はないのですが
何点か当時の最先端のドレスも展示されていて、見ていて楽しかったです。
ココ・シャネルが当時のフランスで画期的なデザイン革命を起こしたのは、ファッションに疎いわたしでも聞いたことがありますが、今回は2つの世界大戦のはざまの時代という、世界的な時代の流れも見ることができて面白かったです。
当時の女性の社会進出は、世界大戦とスペイン風邪の流行で男性の人口が減ったことも影響しているとか。
生まれる時代が違えば、もしかしたら社会の風潮で日の目を浴びることができなかったかもしれない。
今回、シャネルもローランサンと並ぶこの展覧会の目玉だったのですが、やっぱりガブリエル・シャネルはエネルギーのあるすごい女性だなあと、シャネル(ブランド)にまったく興味を持ったことのないわたしでも思いました。
3)カール・ラガーフェルドがよみがえらせたローランサンの色彩
京都会場でしか見られない!モード界の鬼才ラガーフェルドが現代に蘇らせたローランサンの色彩(パレット)を表現したドレスを展示します。
(「マリー・ローランサンとモード」公式ページより引用)
シャネルのデザイナーを長年務めたラガーフェルドが、ローランサンの絵画の色彩から着想を得てデザインしたドレスが数展展示されていました。
ポスターにも使われているローランサンの《ニコル・グルーと二人の娘、ブノワットとマリオン》にあるような、ピンク、光沢のあるグレー、引き締める黒の色の組み合わせ。
会場内では、パリコレの様子もビデオで流されていました。
いつまでも見ていても飽きない感じで、会場でも皆さん釘付けで見ておられました。
セレクトする色合い(やデザイン)にもよるのですが、ピンクとグレーの組み合わせがこんなに素敵なのかと初めて知ったような不思議な時間&空間でした。
ローランサンとシャネルの生きた時代には、ふたりは個性が強過ぎていまひとつ噛み合わなかったようですが(笑)、その二人の強烈な個性が、ラガーフェルドというモード界の鬼才によって現代にコラボしたようです。
今日の1枚:〈マドモアゼル・シャネルの肖像〉
いつも美術展に行くと、お気に入りの一枚を選びます。
今回は、ベタですがこの展覧会の顔とも言える一点。〈マドモアゼル・シャネルの肖像〉です。
ガブリエル・シャネルがマリー・ローランサンに自らの肖像画を依頼して描かれたのがこちらの作品。
当時のシャネルは、時代の先を先を行く女性。ツンツンとんがっていたそうです(笑
そんなツンツンなシャネルは、ローランサンの描いた自分の肖像画の、女性らしい柔らかな雰囲気に「私はこんなんじゃないのよ! 描き直して(台詞は創作)」と突っ返したらしいです。すげー、シャネルさん。
しかし、ローランサンも負けていません。
自分の仕事に誇りと自信を持っていた彼女は、「直す必要ないわ、これで良いのよ! 文句あるなら受け取らなきゃいいわ(台詞は創作)」と、シャネルの要望を拒否したらしいです。ローランサンもすげー
結局この絵画はシャネルの手に渡ることはなく現代まで残ったそうです。
なんていうか、当時の時代の先を歩く女性たちの我の強さにびっくりです。
それくらい自己主張が強くないと、自分らしい仕事はできなかったでしょうね。
シャネルもローランサンもかっこいいではないですか。
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でも、改めてこの絵画を眺めると、当時のツンツンとんがっていたシャネルは気に入らなかったかもしれないけれど、わたしはとっても良いなあと思いました。
柔らかな曲線と描線で彩られた絵画は、たしかに女性らしい柔らかな印象を与えますが、でもシャネルの凛とした気品のあるしなやかな美しさも感じられます。
また、ローランサンが好んで用いた白い鳥のモチーフも描かれていて、そこにはシャネルの凛とした佇まいと、ローランサンの独自の世界観が融合しているようでもあります。
ローランサンが「描き直す必要はない」と頑と譲らなかったのは、正しかったように思いました。
関連情報
2023年4月16日〜6月11日まで、京都市京セラ美術館で開催されました。
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展覧会を見たあとは、美術館併設のカフェでお茶しました。
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