アスリートのコンディショニング・アドバイザーもされているそうです。
自律神経の専門家でもあり、プロスポーツ選手などのコンディションを整えるためのアドバイスもされている著者が、一般向けにわかりやすく日常でできる「整え方」108選を書かれています。
とても読みやすく、「おお、なるほど」と思うところがいろいろありました。
はじめに:コンディショニングとは
冒頭の「はじめに」の部分で、トップアスリートが小林先生にアドバイスを求めるわけについて説明されています。
わたしはアスリートではないので細かい部分は端折りますが、要約すると
自分の実力を100%発揮するのは簡単なことではない。
本番で緊張してうまくいかず「練習のときはもっとうまくやれたのに!」とか
イマイチな結果に終わったとき「調子が良いときはもっとできるんだ」とか
思うことありませんか?
持っている力を発揮するために状態を整える」というコンディショニングをきっちりやらなければ、真の力を発揮することはできません。
だから一流のアスリートになればなるほど、徹底した準備をしますし、メンタルの鍛え方を工夫し、集中力を高めるトレーニングを欠かさないのです。
じつはこの一流アスリートがやっているコンディショニングの意識こそ、多くのビジネスパーソンにもっとも欠けている部分だと私は感じます。
(P17 はじめに)※太字は本文通り
人の実力って、その日のコンディションによって毎回100%じゃないんです。
長時間勤務でうつ病になって休職寸前の人は、コンディションが下がった状態で(例えば10〜20%くらいで)毎日働いているかもしれません。
本書は、この「コンディショニングをどうするか」を自律神経の観点から日常にできることを中心にシンプルに書かれています。
本書の構成
各章ごとにテーマがわかりやすいです。
第1章 まず、モノを片づけて、心を安定させる
——身の回りの整え方
第2章 一日ごとの体の変化を意識する
——時間の整え方
第3章 無理したつき合いは断つ
——人間関係の整え方
第4章 体のスイッチを意識する
——体の整え方
第5章 食べ物と食べ方を少しだけ変える
——食の整え方
第6章 今夜の振り返りが、スムーズな明日をつくる
——行動パターンの整え方
全部で108の「整え方」が書かれています。
通しで読んでもいいし、自分の気になるテーマをピックアップしながら読んでもいいなと思います。
「あ、ちょっと最近コンディションが落ちているな」と思ったら、本書を開いてみるのもおすすめです。
今回も、わたしが気になったところを3つピックアップしてみたいと思います。
感想
今回は、こちらの3つのテーマをピックアップしてみました。
- 身の回りを整える
- ゆっくりやる
- 失敗から成功へ
では、いってみましょう。
身の回りを整える
第1章の、いちばんはじめの項目が「1 鞄の中を探した瞬間に、あなたは乱れている」でした。
ええー、整理整頓と自律神経って関係するの!!?
モノを取り出すために、鞄の中を探し回る。
じつはそんなささいなことで私たちの自律神経は乱れ、仕事への集中力は大きく下がってしまいます。
(中略)
(モノを探すための)ちょっとした瞬間に、交感神経は跳ね上がり、血流は悪くなり、集中力は下がり、結果として仕事のパフォーマンスは著しく低下します。(P40 第1章 まず、モノを片づけて、心を安定させる)
整理整頓ができていないことが問題なのではなく(誰にでも得意不得意はありますから……)、整理ができていなくて必要なモノを探すときに焦ったりこころが乱れたりすることが、自律神経に影響するようです。
たしかに、急いでいるときほど必要なものが見つからなかったりすることはあります。
あと、自分が疲れているときほど、鞄のなかにその日必要じゃないものが入っていることもある。
ううむ。
「片づけ」「整理」「最適化」の作業を、職場から帰る前に毎日やる。それを習慣にしてしまうのです。
いわばそれは、一日の仕事の終わりを表す儀式のようなもの。(中略)整理しながら、少しずつ体を「オンモード」から「オフモード」へ切り替えていきます。(中略)この習慣だけでもコンディショニングを整える効果は十分にあります。
翌日の朝、会社に来た瞬間に、自分のデスク回りが整っていると、余計なストレスを受けず、スムーズに仕事に入っていけます。(P62 第1章 まず、モノを片づけて、心を安定させる)
調子が良いときは、多少散らかっていても気にすることなく集中することができるそうです。
問題は、調子が悪いとき。
整理や片付けは、そのためにあると
調子が悪いときにこそ、いかにその悪い状態に流されることなく、自律神経を上手に整え、いつもと変わらぬ力を発揮できるか。
そこにコンディショニングの差が出るのです。(P63 第1章 まず、モノを片づけて、心を安定させる)
逆転の発想だなあと思いました。
わたしの場合、調子が悪くなってくると(そういうときは忙しいことが多い)、部屋も散らかってきます。
部屋がすっきり片づいているときは、気持ちもすっきりして穏やかに過ごせるなあと思っていました。
調子が悪いときこそ、いつものルーティンを大切にする。
そのために、身の回りの整理整頓もルーティン化する。
ゆっくりやる
個人の性格や気質の違いもあるかもしれませんが、
交感神経:闘うモード
副交感神経:リラックスモード
だと
交感神経優位:早く機敏にアグレシッブに
副交感神経:ゆっくりのんびり緩慢に
というイメージがあります。
もちろん交感神経優位な活動性も大切なのですが、ときには活動をしている時でも副交感神経優位な態度のほうが望ましいこともあるそうです。
自律神経を整え、自分のコンディションを保つコミュニケーション法として「ゆっくり静かに伝える」はオススメです。これを意識するだけで、ストレス要因は圧倒的に少なくなり、自律神経が乱れる機会を減らすことができます。
(P178 第3章 無理したつき合いは断つ)
会社に着いた時、できるだけベストなコンディションで仕事を始めるには、通勤時にはゆっくり、リズミカルに歩くことが一番。
(中略)「ゆっくり」を意識することで呼吸も深くなり、それだけで自律神経が整います。そして「リズミカルである」というのも、適度に副交感神経を高め、落ち着いた状態で、集中力を高めてくれる効果があります。(P141 第4章 体のスイッチを意識する)
ほとんどの場合、自律神経が乱れてくると、すべての行動が早く雑になってきます。
(中略)
しかし、ここぜぜひ覚えておいてほしいのは、イライラして作業を急いだり、雑にやると、さらに自律神経は乱れ、コンディションを崩していくという事実です、
(中略)
だから、忙しい時こそ「ゆっくり、丁寧にやろう」という気持ちを持って、作業をすることが大事なのです。この意識を持てた瞬間から、体のコンディションは整ってきます。(P206〜207 第6章 今夜の振り返りが、スムーズな明日をつくる)
ずっと前に故斎藤茂太先生の「ゆっくり力」の本を取り上げたことがありましたが
「ゆっくり」には自律神経を整える作用もあるんですね。
確かに緊張したり交戦モードだったりすると(わたしは前者が多いかな)、呼吸は浅く心拍数も上がりがちです。
それは自律神経を乱すことにも繋がる。
「急がば回れ」とことわざにもあるように、気持ちが急くときほど「ゆっくり」を意識するのは大切かもしれません。
緊張する場面や慌てる場面ほど落ち着いて行動することが大切になるんだと、肝に銘じておこうと思いました。
失敗から成功へ
最後は『73 「今回こそはうまくやる!」という感覚が大事』から。
その前のページに『72 ミスは必ずその場でメモ』があります。
「失敗は成功の母」とも言いますが、ミスをしたときにメモをすること、さらに「次はこうしよう」と転換して行動に移すと、行動パターンがアップデートされるのだそうです。
「これまではダメだったけれど、今回は○○する」という感覚を意識するのが最大のポイントです。
(中略)
「行動パターンを変える」「行動の質を高める」とは、この繰り返しでしかありません。過去の失敗を引き合いに出しながら「自分で上書きした行動」を意識してやる。ただそれだけです。(P195 第6章 今夜の振り返りが、スムーズな明日をつくる)
これって仕事はもちろん、日常生活にもいろんなところに応用が効くことだと思います。
誰にでもミスはあるもの。
ミスを、次にどう繋げるか。
なんとなく「次はこうしよう」と思うことはありましたが、なんとなくではなく意識すること。
ミスをしたときってけっこう凹みますが、失敗から成功パターンへ持っていく。
そういう心持ちをしているだけで、違ってくるように思いました。
結び
ひとつひとつ、いろんな「コンディショニング」のための方法が書かれていて、定期的に読み返して確認してみたいなと思いました。
調子が悪い時ほどコンディション(自律神経)が乱れていると思うので、そういうときほど確認してみたいです。
もちろん人によりけりなところはあると思います。例えば身だしなみは著者なりの工夫でもあります。
本書をきっかけに、自分なりの「コンディショニング」の最適解を見つけられると良いですね。
関連情報
漫画も自律神経の整え方の基礎がわかりやすくておすすめです。
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