待ちに待った、17巻です。
※物語の内容に触れています。ネタバレにご注意ください。
感想
道〜みち〜
16巻の記憶がたまちゃん(+京都弁な宗谷さん)しか残っていなかったので
「そうだった。二階堂との対局で終わっていたんだった」と慌てて16巻を持ち出して復習しました。
17巻のカバーにふさわしい、零と二階堂の対局(二階堂くん視点)。
ひなちゃんと良い感じな零くんは、まさかのジャックラッセル化。かわいい。
そこに負けじと立ち向かう二階堂くんも、熱い、熱い。
ふたりともバックグラウンドはそれぞれに違うのだけれど
決して順風満帆な人生を歩んでいなくて
だからこそ、それを糧に将棋に生きてきた、ある意味似たもの同士。
でも、自分を悲劇の主人公にしないで進んでいる感じがとってもいいなと思いました。
「ぬくぬくあったかくて心地いい」ところを知ることで、そのぬるま湯につかっていることが腑抜けになるのではなくて
次のステージへレベルアップする感じ。
これまでの人生を否定することなく、そこもあって、今もあって
だからこういう将棋が指せるんだと。
田中さんが(もはやセリフが心の声なのがデフォルトで素敵すぎる)
「いつもは何を考えているのかわからん将棋だが…
——今日は なお いっそう 微塵もわからん
だが 明るい
心が沸き立つような 明るい将棋だ」
(3月のライオン 17巻 P50)
と言っているように、
これまでの零くんもちゃんとそこにいて
そして、新しい零くんもそこにいる。
夫婦二人三脚で子育てをがんばりながら棋士を続けてきて、子育てがひと段落して、さらにひと皮剥けたような将棋を指す田中さんが言うと、説得力があります。
そこに、なんだか相乗効果で乗っかる(巻き込まれるとも言う)二階堂も良いな。
たぶん零がジャックラッセルよろしくなキテレツな将棋を指したのは、その前の二階堂と重田さんの対局があったからで
さらに次の対局相手が二階堂だったから、もう容赦なくやっても大丈夫だよねという信頼感(くもりなき目)があった(からのジャックラッセル化・笑)。
巻き込まれた二階堂は、大変でしたが(いろんな意味で)
そのあとの島田さん家の研究会での「心友」なおふたりを見ていると
なんだか巻き込まれ事故の二階堂も良かったね、と思う。
カバーのふたりの笑顔が沁み入ります。
あかりちゃんの大冒険&あかりの銀座物語
将棋のターンのあとの合間の、川本家のターン。
17巻はあかりおねいさん大活躍の巻。
あかりさんがいれば、三月町商店街はとりあえずなんとかなっていくんじゃないかと思う。
なんだったら、あかりさんがいれば世界は胃袋で平和になるんじゃないかしらとか(笑
周りのお店も巻き込んでのあかりさんの威力がすごい。
そしておいしそう。
個人的にあかりさん自身にも幸せになってほしいなあとか
なんだったら島田さんの胃袋も満たしてほしいなあとか(私は島田さん推し)
いろいろあるんですが、とりあえずこういうターンが挟まれるのも「3月のライオン」の魅力。
今回の「あかりちゃんの大冒険」で気づいたのですが
手法は違えども、あかりさんはやはり銀座のママ、美咲さまの姪なのだなと思いました(笑
その美咲さんさえもギブを出す、電気圧力鍋。
ちゃっかり高価な電気圧力鍋を複数ゲットして、あかりさんはかなりのやり手です。
遠い音楽
そうそう。零と二階堂の白熱した対局で忘れていたけど(笑)、次は久しぶりの島田さんの出番。
島田さんは島田さんで、また歩んできた道のりが哀愁漂ってなんとも言えません。
山形からの写真に、別れた元カノさん(とそのお子さん)が毎回写っているって!
なんだ、この切ない感じ。もしかしたら自分の奥さんと子どもだったかもしれないとか、毎回こころの片隅に思っているかもしれないとかとか。
そんな余韻に浸る間もなく、世話のかかる島田研の坊やたち(+スミスさん)
零や二階堂が、どうしようもない状況で不遇に置かれたことで将棋しかないと生きてきた人たちなら(先天的というか)
島田さんは、自分で敢えてその茨の道を選択して、選ばなかった人生を置いてきて、将棋に生きざるを得なかった人。(ある意味後天的というか)
田中さんみたいに、両立する人もいるけどレアケースで
たぶん島田さんの場合、棋士の道を選んでも選ばなくても、どちらでも苦難は広がっていて
あえてその道をものすごい努力で地道に進んできた。
島田さんだって十分すごい人なんだけど、それでも化け物級の天才の人たちに囲まれていると凡人レベルが拭えず(あの、14巻の鳥の喩えが言い得て妙。彼は鳥のふりして自転車を漕ぎまくるのです)
それでも進むしかない。
あの、最後の零の背後をつくような「人間なら勝てる」にゾクゾクときてしまいました。
これは18巻、波乱の予感しかありません。
わたしは割と島田さんが好きなんだけど、たぶん島田さんの面倒見良くて不器用で努力家でそれでいて人間くさいところが、(主人公含めた)非凡な人々のなかにあっていちばん共感しやすいからかもしれません。
島田さんって、立ち位置がハチクロの竹本くんに近い気がする。花本先生ほど人生を諦めていなくて(あの人は終盤息を吹き返しますが・笑)、もっとギラギラしている。
こういう陰ながら努力を重ねてきている人が報われる世界であってほしいような、願望のようなものがあります。
(あかりさんのところでも書いたけど、超個人的に、わたしは島田さんにはあかりさん推しで、あかりさんに胃袋を満たしてもらえたらいいよと思ったりするんですが、零やひなちゃんに比べると、あかりさんの未来の旦那さまはきっと物語中では描かれないだろうなあという現実的な予測もあります。ハチクロの大どんでん返しを見ていると、零がひなちゃんと結ばれたらそれだけでも御の字かもしれない)
結び
前巻から約1年半。また彼らに出会えて嬉しかったです。
長く続いていて、物語はどこで帰結するのかな(ちゃんと終わるのかな)と
いつも心配なのですが、これからも見守っていけるといいなと思います。
零が高校卒業するあたりがひとつの節目なのかなあ。
18巻も気長に待ちたいと思います。
関連情報
▽今回の特装版はエコバッグです!
(ちなみにわたしは今でも13巻特装版のエコバッグを愛用しています。
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