最近伊坂幸太郎さんにハマりました。
というわけで、4冊目になります。サクサク感想行ってみます。
感想
「明日から、もう俺の人生、残り全部、バケーションみたいなものだし。バカンスだ」
「意味分かんないんだけど」(中略)「バケーションってのはいいね」とにっと笑った。「わたしもそうしようかな、残り全部バケーション」
(P39 第一章 残り全部バケーション)
長編と言いつつ、今回の作品はひとつひとつのお話は時系列的にバラバラで、一見繋がりがあるように思えない。
「これはどういうことだろう?」と思うことは、これまで読んできた伊坂さんの小説でも思ったので、まあ作者を信じて読み進めるわけです。
そうすると、最初はひとつひとつがバラバラに見えた点が、実は巧みに配置されていたことが最後にわかって(ほんとうに、物語の終盤になるまでわからないのがまた面白い)、その繋がりの精緻さにまた感動するのでした。
こういう面白さってあったんだ、と改めて伊坂幸太郎さんの魅力にハマってしまった人です。
今回の物語の主人公岡田さん(主人公と言っても、彼の視点から物語が語られることはあまりないので、これまた不思議。でも、この作品の中心にはいつも岡田さんがいる)も、なんとも憎めない不思議な魅力のある人物でした。
冒頭の引用は、その岡田さんの台詞です。
そしてこの、タイトルにもなっている「残り全部バケーション」が、リレーのバトンを繋ぐように終盤の溝口さんのところまでやってくる。
な、なんてよくできたタイトルなんだ! 最初意味がわからなかったけど。
そして、不思議なんだけど物語のエッセンスがわたしの内側に染み込んできて
「残り全部バケーションって考え方って悪くないな。(沙希さんが言うように)わたしも”残り全部バケーション”にしようかな」とふと思い立ったのです。
そういう発想ってそもそもなかったし、わたしも沙希さん同様「意味分かんない」と思ったし、でも物語を通して、岡田さんという人の在り方(実際にその”残り全部バケーションの中身が描かれているわけではないにも関わらず)を通して、「そういう考え方もありだな」と思いました。
まあ、沙希さんは女子高校生だし、岡田さん含めて自分と全然重なる人はいないんだけど、物語を通して自分の凝り固まった頭がほぐされるのは良い体験ですね。
ここからはちょっと自分の話。
※興味のない人は読み飛ばしてください。
このブログでもときどき書いているけど、わたしは、割とずっと「がんばらないといけない」と思ってきた、まあしんどい人でした。
数年前に「がんばるのをやめよう」と思って、生き方の方向修正をして、数年かかったけど今はそれなりに楽しい日々を送っています。正直言って生きてきたなかでいまがいちばん人生楽しい。
楽しいんだけど、一方で人生をどう閉じようかなと真剣に考えちゃうんですよね。ほら、根が真面目だから。
わたしより年上の人からしたら怒られそうな話ですけど、本人はそれなりに真剣です。人生は夢や希望に満ち溢れた可能性無限大じゃないのはもうわかっている。
でも、例えば。
これまで自分の人生を破綻しないようにがんばってきたわたしを労い、「残りは全部バケーションでいいよ」にしたら、なんだろう、これからの人生がさらに楽に生きれるような気がしてきました。
別にバケーションだから仕事しないって意味じゃないんです。
ごはんを食べる手段は必要だし、幸いにして仕事は嫌いじゃないし、とりあえず身体が動くうちは働いていい。(そんなにガツガツ働いてないし)
FIRE(Financial Independence, Retire Early:早期リタイア)は魅力的だけど、自分の資本力じゃ到底無理なのでそこは目指すところじゃないとも思っている。
「要は気持ちの持ちよう」と言ってしまうと面白みがないのですが、岡田さんを通してなんだかそういう境地に立てたのは、自分にとって予想外の恩恵でした。
岡田さんみたいになりたいとか、岡田さんの生き方が参考になったとか、そういうのとは全然違う次元の話です。
この本を読んでみんながみんなそう思うとはとても思えないけど、本を読むことで、自分のなかに眠っていたつぼみが刺激を受けて、花開いたりするような体験。
というわけで、わたしもこれから「残り全部バケーション」で生きようと思います。
あるときから、人は「残り全部バケーション」で生きてもいいんじゃないかな。
それが定年退職後にやってくるのか、若くしてやってくるのか、人生の終わりにやってくるのか、いつやってくるのかは人それぞれでわからないけれど。
結び
実は今日、誕生日なのです。
というわけで、今日からわたしの人生、残り全部バケーションにしようと思います。
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