主人公に立ち還る「3月のライオン」15巻感想・考察

 

1年ぶりの、「3月のライオン」新刊です。

ぎゅーっとこの1冊にいろんなものが詰まっていて、何から触れていいか悩みます。

今回は、主人公に立ち還った15巻と、ブンちゃんのための15巻でした。

 

※めちゃくちゃ長いです。
※ネタバレ含みます。

 

主人公にフォーカス

最近の動向として、零以外の棋士さんにクローズアップされることや、あかりさんなど周辺の人について奔走する零がよく描かれていました。

それ自体は、例えば棋士さんも、それぞれのキャラクターで背負っているものとか背景とか将棋スタイルとか(将棋はわたしは素人なのでよくわからないんですが)、ほんとうに千差万別で、単純にひとつの読み物として面白いのです。

でも、下手すると零は全然登場しなくて端っこのほうにちらりと登場したり、主人公なんだけどとっても残念な扱いになっていました。それはそれで面白いんだけど。

 

また、川本家のいじめ問題や父親問題では、零くんはとっても親身になって動いていて、ついにはあかりさんの結婚相手にまでお節介をかけ出して、1巻のときの彼に比べるといろんな意味で成長していて、まあ肝心のひなちゃんとの恋模様はさまざまな事情でちょっと棚上げされているけれど、でもそれもまあしょうがないかというか、面白いからOKみたいなところもありました。

 

でもやっぱりここは主人公。

いつかは戻ってこないとね。

 

15巻は、ひなちゃんとのことも、彼自身の将棋のことも、見事にフォーカスされていて、それでいながらあづささんというまた個性的な新キャラも登場して(初登場なのに表紙を飾るなんてすごい快挙!)いろんな意味でとっても濃厚でした。

 

零とひなちゃんの恋愛模様

このなんかいろいろ進んでいるようで進んでいないカップルなのですが。

14巻を読んで、単純に零くんの恋愛テクの不味さと、ひなちゃんの小学生並みの幼さの問題だけではないんだなと思いました。

 

特に「あ、これは思ったよりも深刻だ」と感じたのは、実はひなたのほうです。(14巻感想を書いたときはハチクロフィーバーで触れるのをすっかり忘れていたんだけど)

 

父親のいろいろとしでかしたことは、こんなにも川本家の女性たちに傷を残している。

それは、あかりさんの恋愛に向かうときに感じる怖さとも似ていて。

 

目の前で、自分たちの父親と母親に起こったこと。

ひなたはあかりさんよりは幼かったから、そのことで起きたこころの傷つきは、あかりさんほど言葉で表現できる段階にはないんだけれど、でもやっぱり残っている。

 

高橋くんに対する憧れも交えたかわいい恋心とは全然違うラウンドで、零に「結婚を考えています」ってしかもあろうことか父親を前にして言われて、そりゃあびっくりしないわけはない。

だってひなたにとって、最も身近な結婚のロールモデルはくだんの両親です。

 

いろいろすっ飛ばして言ってしまった零も零なんだけど(でもそういうところが主人公くんの魅力でもある。わたしは好きです、あのシーン!)、ひなたもまた「そういうものと自分は遠いところにいる」と潜在的に感じていたのかもしれません。

 

真剣にそのことについて考え始めると、否が応でも両親のことを思い出されるわけです。

だからその回避が、「おねいちゃんと零ちゃんはお似合いだ」という思考にいってしまうのかなとも思う。単純に小学生的な幼さだけではなく。

 

しかしお祭り効果はすごい。

非日常的で、いつもより気持ちも高揚するから、気持ちも素直に出てくる。

周囲の人たちのツッコミよろしく、そういえば零はひなたに面と向かって「好き」と言ってなかったと今更ながらに知り(笑)、幸いにして高校なので川本家の人々(あかりと美咲さん)からの妨害にもあわず。

少し、前進した。ほほえましく、良かったです。

 

戻ってきた深いドロドロとした闇(原点)

最近では他人のお節介を焼くほどすっかりコミカルなキャラに化した主人公くんですが、今回は久しぶりに序盤のドロドロを彷彿とさせる展開がやってきました。

川本家の人たちと出会って、将棋の世界でいろんな人たちと出会って、冷たくかたく深い闇で占められていた零の世界が、温かく柔らかくほどけていっているのは、とてもとても素晴らしいことです。

 

でも、「ちょっと待てよ。なんか忘れてない?」と奥底に眠る”それ”はやっぱりいるのだろうと思います。

 

零にとって根底のところにある「生きるために将棋の神様に嘘をついた」という罪悪感は、彼にとってあまりにもむずかしい問題で、容易に答えの出る問題ではない。でも、いつかどこかで向き合わないといけない問題。誰にも言えない、彼だけの秘密。

 

わたしは劇場版を観たときに「これは好きとか嫌いとかそういう単純なものではない。縁(えにし)とか業(ごう)とか、そういう次元のものだ」と腑に落ちたのですが

そういえば漫画版はそっちはまだ扱っていなかった!(零のひなちゃんへの「好きだよ」って言ってないレベルで忘れていた)

 

いや、まあ。

人によっては、そこを扱わないでなんとなく将棋を続けていく人生もあります。それはそれで悪くない。

 

でも、ここは我らが主人公くん。

彼の闇は、とんでもなく深いのです。そして、それを見過ごして生きていけるほど器用でもない。(わたしは、その不器用さはとても好きです。彼の魅力でもあると思う)

 

林田先生の「そのおにぎりは絶対手放すな」はとっても大事な言葉で

そのあと林田先生がこころのなかで言った裏名言(羽海野先生お得意の)

「オレは ずっと 桐山の こと 見て来た
お前がずっと探して来たのは 自分が生きていてもいいと思える場所
ただ ただ それだけだった
気づいてないかもしれんが 桐山
お前 今まで 一度もオレに
名人にも 獅子王にも なりたいって口にした事ないんだぜ」

(「3月のライオン」15巻 P144~146から引用)

 

これ、14巻で島田さんが林田先生に「タイトルが欲しい」と言ったのとものすごく対照的なんだなあと気づきました。

 

プロの棋士ならおそらく当たり前に思うことを、零は思ってない。

やっぱり根底から覆る闇を彼は抱えている。

 

たぶんこれは頭であーだこーだ考えて答えが見つかる問題ではなく、それこそ日常を懸命に生きながら、日々将棋と向き合いながら、自ずと答えが出てくるまで模索することなのだろうと思います。

だから、「え、主人公くんそれでいいの!?」っていうくらいの扱いを受けながらも奔走する零くんのくだりはやっぱり大事なんだろうなあと思います。

 

ブンちゃん、ありがとう。

羽海野先生のTwitterで事前に知っていたのですが

羽海野先生の愛猫ブンちゃんが、天国へ旅立たれました。

 

15巻の限定版は、ブンちゃんの2020年ダイアリー。

コミックスのあいだの書き下ろしも、ブンちゃんが登場します。

 

これまでにも何度か登場されていたブンちゃん。

いつかお別れがやってくるのはわかっているけれど、そのお別れもとても優しくて、悲しいけれどこころが温かくなりました。

 

限定版ダイアリーはとても気になったのですが、わたしは毎年使う手帳をこれと決めているし

手元に置いていても有効に扱える自信がなかったので今回は見送りました。

 

 

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