※注意書き(2023年2月改稿)
こちらは「蒼穹のファフナー BEYOND 第4〜6話」公開前に、公式さんがYouTubeでBEYONDまでの全作品(無印、RIGHT OF LEFT、HEAVEN AND EARTH、EXODUS)を期間限定で無料公開されていたときの感想・考察になります。
※1期〜BEYONDまでネタバレ含みます。
※とっても長いです。すみません。
EXODUSまでのファフナーを振り返ってみた
途切れ途切れで見ていたのを一気に見返してみて、気づいたことをつれつれと書いています。
ファフナーのって、単純に「地球外生命体がやってきたから悪いやつをやっつけて、地球を平和にしよう」って作品ではないところが面白いなと思います。
昭和のころのアニメだったらそういう構図だったと思う。
そして、そういう路線を割と地で行っているのが、人類軍かな。
描き方の問題で、彼らは彼らなりの正義があるんだと思う。
それに対して、アルヴィスはやり方が全然違う。
前提として、アルヴィスの人たちは人類軍に見捨てられていることがある。
だから、人類軍に頼らずに「どうしたら自分たちが生き延びれるか」を考え、
そのために敵(フェストゥム)のことを知り、
フェストゥムと戦うためのファフナー、
ファフナーに乗るための子どもたちの遺伝子操作まで行なっています。
平和は勝ち取るものではなく、「文化」なのだというのがアルヴィスと人類軍の根本的な違い。
だから子どもたちには、真実を知るまでは平和という文化を徹底させる。
真実を知るのはその後で良いという考え方。(真実を知った子どもたちは「卒業」を迎えます)
史彦さんとか、溝口さんとか、島の大人たちの多くは人の業の深さを知っている人たちだからこそ、子どもたちの世代には、まず平和を知ってほしいと思っている。
未来を担う新しい世代になにが必要かをすごく考えている。
アルヴィスのやっていることが、正しいとは絶対的には言えません。
遺伝子操作、同化されるリスクを犯してのパイロット育成、人類軍と袂を分かつことでのかりそめの平和。
敵であるはずのフェストゥムを、可能な限り利用して発展したのがアルヴィスです。
物語のなかで大きなキーになるのは真壁紅音さん。(一騎のお母さん)
この人のなにがすごいかというと、あのよくわからん地球外生命体とはじめて対話をしようとした人で、祝福を与えた人。
そのなにがすごいかというと、フェストゥムに変化を与えたこと。
竜宮島のもともとは日本で(ファフナーのなかでは早々に人類軍に見放されて滅びた国なんだけど)、まあそれはこれが日本のアニメというのもあるんだけど、なんというか日本の心性が表されているなあと思います。
日本は基本的に島国なんだけど、過去に何度も外からいろんなものがやってきて、しかし侵略されないで、自分たちの文化と融合させて変化を遂げてきた国です。
古くは古代から、中国など大陸からいろんな文化がやってきたり、遠いヨーロッパの国からキリスト教が伝わったり、明治時代になると欧米の新しい技術や思想がたくさんやってきたり。
その度に、それらの影響を受けてダイナミックに変わっていくし、ある意味変化に柔軟すぎるほど受け容れも良い。だから一見すると日本人は中身がないとか、自分の意見はないのかとかも言われるんだけど、なんか根っこのほうは外の世界に侵略されない頑固な部分があるというか。それを日本人の当人たちもまったく意識していないんだけど。
完全に染まっているわけではなくて、各時代で自分たちの色に変えていく。
※この辺は、文献が古いのですがこちらとか参考になりそうです。
外から来た新しいものでも、使えるものは使っていくし
変化が必要なら、それにも対応させよう。
でも、大事なものは守り抜く。人類軍には媚びません。
人類軍は命は基本的に数字でしかなくて使い捨て感が半端ないんだけど、アルヴィスは命の重みは等しく重いものという感じがある。
このアニメの死亡率といったらすごいんですが(だから鬱アニメなんだ。そこ含めてファフナー)、なんか命が軽く扱われていないことが伝わってきます。みんな、いなくなってしまった人たちのことを、覚えている。
大人たちも、命の重みで、いまの自分たちが生かされていることを、いつもこころに留めている。
だから、いなくなってしまった人も、なぜかすぐに近くにいるような気配がする。
実際に、それはEXODUSでゴルディアス結晶として実体化していきます。文字通り、いなくなってしまった人たちが島を生かしている。
竜宮島のファフナーに乗っている子たちは、みんな「悪い敵をやっつけるぜ!」みたいなヒーローっぽい感じがないんですよね。
もちろんやってくるフェストゥムとは戦うんだけど、あのファフナーと繋がるときのガチャンとするときも痛そうだし、そもそも乗るだけでどんどん寿命が縮んでいくのです。
みんな表情は切ない。見ているほうも切なくなる。でも、なんかその背後にはこれまでのたくさんの人たちが感じる。
だから、作品を重ねるごとに、見るとどんどんなんとも言えない感情が押し寄せてくるのです。
BEYOND第一弾を見たときも、いま全作品を見返したほどにはよくわかっていなかったんだけど(あとで再考察します)、見終わった後の余韻が強すぎてしばらく頭がうまく働きませんでした。
知れば知るほどいろんな人のいろんな思いが重なり合って、胸の奥に響いてくるのです。
例えばBEYONDで一騎の「大きくなったな、総士」のひとことに、どれだけの思いが積み重なっているのかとか。表情とか、そういうのまで含めて重みがあるなあと思います。
真矢を考察してみる。
ファフナーは登場人物それぞれにいろんなドラマが溢れているので(そして推しキャラを作るともれなく退場される率も高いという……)、語り出したらキリがないのですが、今回は真矢に焦点を当ててみます。
というのも、BEYONDを見たときに「真矢、変わったなあ」としみじみ思ったからです。
BEYONDで、マリスに連れ去られた総士がアルヴィスに帰還した際に、周りのみんなが2代目総士を歓待するのに(みんな新総士が可愛くて仕方ないんだなと愛情に溢れている)、ひとりドスの効いた怖いお姉さんが!!
でも、なんていうか、真矢はほんとうにファフナーになくてはならないヒロインなんだなあと全編見返して改めて思いました。
もちろん一作目からヒロイン待遇でしたが(エンディングとか)、でもなんか恋愛とかそういう次元にはいかなくて(一騎と総士の絆が強すぎて)、でもここぞというときに真矢がいないとやっぱりダメだからこそのヒロイン位置。
不思議なんだけど、一騎と総士は確かに親友とかそういう次元を超えた強い繋がりがあるんだけど、このふたりだけだとやっぱり完全すぎて返って不完全なのです。
ここで真矢という女の子が入ってくることで、一騎は真矢の前でしか出せないことを出せるし、総士も真矢の前でしか出せないことを出せる(総士は自分が損な役回りだと言っているけど、まんざらでもない気がする)。
でもじゃあ恋愛フィールドに行くかというと、そこは限りなく遠くなっちゃう感じで、それは男の子ふたりが人から遠ざかっているのもあるし、真矢もふつうの女の子からどんどん遠ざかっているのもある。(ここで、いかに近藤夫妻が健全かがわかる)
真矢の変性意識は、表面上に表れている周りの人に気を遣う、ちょっと不器用で優しい女の子とはだいぶ違います。
EXODUSでそれがどんどんと決定的になっていく。
どっちがほんとうの真矢か? と言われたら、どっちも真矢なんです。
変性意識はその人の一部だけど、その人の真実ではない。人のこころはもっと多面的で複雑。
それこそ平和な世界であれば実現(表面化)しなかったものが、EXODUSでこれでもかというほど人の闇に触れることで、真矢のなかを占めていくようになった。
それくらい、殺伐とした世界は人のこころを変えていく。
逆に、人類軍からアルヴィスに渡った人たちも、竜宮島で平和な文化に触れていくことで、こころが解けて柔らかくなって変わっていきます。
島の大人たちが平和を守る理由の根源が、ここにある。
守りたいのは、平和という文化ではなく「人のこころ」なのだろうと思います。
憎しみではないこころを持つこと。島のコアが持っていて、プロメテウス(BEYONDでのマレスペロ)に持てなかった、というよりそもそも知らなかったもの。
話を真矢に戻して。
総士はもとより、一騎もEXODUSでどんどん人ではない方向性に進んでいって(ある意味フェストゥムに近づいて)いくのに対し、EXODUSでとことん人のこころが持つ闇のほうに触れていった真矢は、どこまでも人なんだろうなと思います。
真矢は、総士や一騎の方向性には絶対にいかない。
このベクトルの絶妙なバランス……さすがだなあと思います!
BEYONDでの真矢の立ち位置ってどうなるのかなあと、気になります。
もう一騎も生と死の循環を超える存在になっちゃったし、総士は総士で生まれ変わっちゃったし、ああ、そう考えるとBEYONDって面白いけどEXODUSまでとは全然違うんだよなあ。
真矢はミツヒロ・バートランドの娘ということをとても意識しているけど、ギャロップさんのようにはならないと個人的には信じています。
でも、これってほんとうにちょっと振り子の揺れ具合で変わってしまうような危ういものでもあるんだろう。
BEYONDを思い出して再考察。
ちょっと記憶がだいぶ薄れかけているのですが、6月に見たBEYONDの1〜3話を思い出して、もう一回考察してみます。
全作品通して見返してみて、すごくすごく、アルヴィスはフェストゥムと対話を重ねてきたんだなあと思いました。
それは乙姫をはじめとした島のコアや、紅音さんの存在や、痛みを教えた総士や、いろんな人の存在があって、島も変化を続けているし、フェストゥム側もどんどん進化している。
それは、一見すると人にとって有害なものもあるけれど、ある意味人間を知らなかったフェストゥムが、だんだんと人間らしさを学んでいる。来栖のような、人の側につくフェストゥムまで出てきた。(余談ですが、わたしは来栖が大好きです)
少しずつ、少しずつ、竜宮島とフェストゥムは、ある意味では歩み寄っているとも思う。
一方で、どんどん遠ざかっているのが人類軍。
あ、でも人類軍にもいろんな考え方の人がいるというのがEXODUSではちゃんと描かれているので、個で見ていくと、そんなに単純にはいえないのですが。
そういうなかでの、エスペラントの存在と、アルタイル。
BEYONDでプロメテウス改めマレスペロの側につく、マリスなる人物は、エスペラントなのだそうです。
あの偽竜宮島は、フェストゥムがつくりだした世界。
放送には変なおまじないがついているし、明らかに歪なんだけど、でも平和という文化を模倣しています。
破壊することしか知らなかったフェストゥムが、ついにここまで来たのかと。改めて考えるとびっくりです。
もちろん模倣だから、その奥にある意味とかまではまだ理解していないようなんだけど(例えば盆踊りの由来とかね。竜宮島の人たちは、死者の鎮魂を意識してやっている)、でも何事も最初は模倣からというではありませんか。
ちゃんとこれまでの流れを知っていると、連れ去られた総士を助けに来た一騎の気持ちはわかるけど、偽乙姫ちゃんの「私たち、ちゃんと人間らしくやっているでしょう!?」的なセリフもわからんこともない。明らかにあの人たちから見たら、一騎のほうが完全に怪しい人だ。(夏祭りなのに変なコート着ているし)
マレスペロは、憎しみから生まれたコア。ある意味かわいそうな存在です。(かわいそうと言うのは、おこがましいかもしれないんだけど)
少しずつ歩み寄ってきた、アルヴィスの人たちと、フェストゥム。
思ったよりも早く竜宮島も眠りから覚めそうなので(100年単位の先の未来かと思っていました。芹ちゃんも出てくるのかな?)アルタイルと、アルヴィスやアショーカのコア、マレスペロ、このへんがどう絡んでくるのかなあと気になります。
そして、対話という土俵から早々に降りてしまったギャロップ率いる新国連がどうなっていくのか。(結果的に自分たちが事態を悪化させてきたという皮肉)
あと、人外に行ってしまった人たちを見ていてちょっと思ったこと。
もちろん、総士も甲陽も戻ってきてくれて嬉しかったし、一騎は主人公なのでいなくなるよりは生と死の循環を超えてそこにいてくれることは個人的にはとっても嬉しいんですが。(あ、総士は生まれ変わっているので、新総士はちょっと別に置いておいて)
悟りモードというか、彼らは葛藤がほとんどないんですよね。その域を超えてしまったというか。
ものすごく悩んで悩んで、うまくいかないことも受け容れていく。自分で選んでいくこと。
ある意味人間が人間たらしめるものがなくなっちゃうのは、ちょっとだけ寂しく、やっぱりそれは全ての人が歩む道ではないんだろうなあと思いました。
フェストゥムが葛藤を手に入れたら、それはそれですごいなあ。
あ、そういえば来栖はそこを劇場版で通りましたね。つまり、フェストゥム側も歩み寄っているんだなあ。
あと、どうでもいいことなんですが、EXODUSからBEYONDまで2+3年なので、一騎世代は25歳前後ですよね。(EXODUSで20歳の誕生日の話があった)
ちょっと幸せ太りしすぎじゃないですか、剣司さん。(30くらいかと思っちゃったじゃないか!)
美羽ちゃんといい、総士といい、成長がおかしい人は色々いるのですが、剣司はそこに乗っからなくて良いと思うのですが……千鶴さんとか全然老けないし……
結び
なんか通しで見返すと、いろいろな思いが溢れかえってしまって、ちょっとでもその気持ちを書き留めておこうと思ったのですが、結果的に全然まとまりがないしまだ語り足りないこともたくさんあります。
THE BEYOND第2弾公開楽しみです。
ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました。
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