蒼穹のファフナーBEYOND第7~9話まで見たところの考察(ネタバレあり)

ファフナー7~9話の2回目観に行ってきました!

前回、観たところでの感想を箇条書きでザーッと書きました。

▽第7~9話箇条書き

感想

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今回は、もうちょっと掘り下げて考察してみようと思います。

 

※個人的な考えや推測も含まれます。「あーそんな考え方もあるんだー」くらいの感覚でお読みいただけるとありがたいです。

※公式設定がどこまでなのかわからないんですが、とりあえずWikipediaの情報を参考にしています。

※これまでのファフナーシリーズのネタバレを含みます。

※長いです。すみません……

 

ベノンのフェストゥムの人たち(セレノア、レガート、フロロ)

今回、第8話で総士が遠見家の料理を完全再現するという偉業(?)を達成しました。

総士が遠見家の味を知っていたのは、偽竜宮島でセレノア(弓子さんの姿をしたフェストゥム)に料理を作ってもらっていたからで、それは美羽の記憶にある弓子さんの料理で、つまりは千鶴さんの味、遠見家の味。

 

えっと。おさらいすると。

セレノア=弓子

レガート=道生

フロロ=乙姫

 

彼らは、美羽とマリスの記憶から再現されているフェストゥムだそうです。

 

でもね。ちょっと待てと思いました。

美羽ちゃんまだ幼かったよね? アショーカの力で身体の成長は急速に起こったけど、自我は幼いままだったし。

 

そもそも美羽は、道生と乙姫に会ったことがない。

父親の道生のことは、ちょこっとミツヒロが美羽に話すくらいのエピソード。

乙姫にいたっては、むしろ美羽は2代目の織姫のほうがまだ関わりがないなりに知っているレベル。

 

料理の味なんて、作り方を知らないと再現すらできないでしょう。(知っていても、再現できるとも限らないですよ。真矢をご覧あれ)

幼かった美羽ちゃんが、それをそばでしっかりと見ていたとは思えない。というか、現在の美羽もお手伝いレベルっぽいし。

 

え、マリス? 君は美羽よりも知らんだろう。

 

なんで君らの記憶からそこまで再現できるんだ!!!????

偽竜宮島では、総士はたぶん普通の料理を食べていたような感じだし。

流石に料理はフェストゥムのケイ素では作れないような気がする。(なんか、マリスとかはもう食事から栄養摂取という概念がなさそうですが、総士はちゃんとごはん食べているよね)

ということは、食材を使って料理しないと作れないのでは。

 

※ここからは、ちょっと妄想というか、想像でのお話です。

個人的に考えられるのは、彼ら(美羽やマリス)はエスペラントであり、通常の記憶だけとは考えにくいこと。

 

ちょっと思ったのは、弓子さんの存在です。

EXODUSで、弓子さんが亡くなったとき、アショーカが美羽のために助けましたよね。

で、最終的に弓子さんはアショーカに同化されて消えています。

アショーカは、同化した人の記憶を包有しているんじゃないだろうか。

 

そして、エスペラントは、通常の人とは違うかたちで、それを共有できる可能性があるんじゃないだろうか。彼らはフェストゥムとお話ができる存在だから。

つまり、ベノンの彼らは、なんらかの形でアショーカを通して得られた弓子さんの記憶をもとに(外的にはエスペラントである美羽とマリスの記憶をもとに)再現されたのではなかろうかと思いました。

 

そうすると、もうちょっと辻褄が合います。

まず、弓子さん本人は料理を作ることができた。(遠見家の味は、千鶴さんから弓子さんに継がれています)

弓子さんは道生さん本人を知っている。

そして、弓子さんは無邪気な言動をしていた乙姫のことも知っている。

 

偽竜宮島のあの再現度の高さも、美羽単一の記憶というよりは、アショーカを通した記憶の集合体のようなものから再現されたと考えたほうが妥当という気がします。

 

竜宮島を出るときに、島の記録は持ち出しているだろうし、映像などの記録を通して美羽やマリスが学習して、そこから再現されているとも考えられるけど。

わたしの仮説は飛躍しすぎかもしれませんが、エスペラントの情報共有って、通常の人間と異なる感じがします。

 

フェストゥムに記憶は再現できても、こころは再現されない。

エスペラントは、通常の人とは異なるコミュニケーションを取ることができます。

これって、とても便利なようで、同時に危うくもある。

人は、見かけ上の言葉のやり取りだけでできているとは限らないからです。

 

EXODUSでの、2代目弓子さんは、弓子さんの記憶を受け継いでいるっぽいけど、なんか弓子さんっぽくなくてある意味別人。

(わたしは、EXODUSラストまでこの2代目弓子さんをずっと疑っていました)

 

それぞれ器や引き継いでいる記憶(情報)は、それぞれに違うし、フェストゥムという人間と異なる生命体という素因もあるのかもしれないけれど、

個人的に、記憶や情報はコピーできても、こころはそのままコピーできないのかなと思いました。

 

どう定義するかはむずかしいところだけど。

例えば弓子さん。彼女は、単に優しくて美羽に受容的な母親ではありません。

めちゃくちゃ個人の感情でときに逸脱した行動をする人だし、だからこそ由紀恵さん(ゆきっぺ)のことも単純に敵と見なさなかったし。

基本的に、人類の未来よりも身近な身内の幸せを守ろうとする人。

だから、2代め弓子さんの、美羽ちゃんに優しいけど全体を見て行動するさまは、アショーカにとって都合の良い行動にも取れて、なんだか気持ち悪かったです。

アショーカを通して美羽のやろうとすることへ理解が深まったのかもしれないけれど、そんなに単純に心変わりってするものだろうかと思ってしまう。

 

乙姫と織姫はもっとわかりやすい。

織姫は、おそらく先代からのコアの情報を正確に受け継いでいるけど、乙姫の人格は引き継いでいない。

 

つまり何が言いたいかというと、心をコピーするのは、そんなに簡単なことではないんだろうなと思う。

 

吉本ばななさんの「アムリタ」という小説で、主人公の朔美は頭を打って別の朔美さんになっています。

 

これ、本人だし記憶もちゃんとあるんだけど、どうにもこうにも以前の自分と今の自分は違う感覚。

ファフナーは器も変わっているんだけど、それに近いのかなあと思います。

クローンを作っても、同じ人間にはならないのと同じで。

そして、他人から見たその人は、その人の全てを表していない。

 

美羽は、そういうある意味自分勝手に行動する弓子ママのイメージは持っていないし(弓子さんは母としてそこは幼い娘に見せていない)、

もしかしたら、フロロの無邪気な乙姫は、弓子さんから見た乙姫像だったかもしれない。(仮に、弓子さんの記憶も使っているとして)

 

乙姫って、生まれたての赤ん坊的無邪気さと、島の女神としての聡明さの両方を持ち合わせていたけど、相手によって見せている部分は使い分けていたから、弓子さんは後者乙姫はほとんど見ていない気がする。

ちなみに、織姫は状況の切迫するなか、素直さを表現することが許されなかった立ち位置なのもあると思います。でも、感情の出し方は乙姫に比べると変化球ながらストレート(なんか矛盾を孕んだ表現だな。つまりツンデレ)。

 

ベノンのお三方は、別に完全コピーするつもりで作られたわけではないんで、弓子さんや乙姫織姫を出してのこういう考察は不毛な気もしますが。

でも外見だけをコピーしたというほど単純なものでもない感じもして(偽竜宮島で総士を育てるために必要だったとしても)、なんだかモヤモヤとしたものが残ります。

器があれば心を移せるというけれど、心と器を分離すると壊れるとも言われているし、器を作るのはマレスペロのパペットを作るような専売特許的な感じですが。心までは再現されないんだろうなあと個人的には思いたいです。

(作品の進行的に、全くの新キャラ作るよりも説明が楽で都合が良かったという仮説はとりあえずなしにしておきます……)

 

エスペラントの危うさ

ここに来て、改めてエスペラントは全能ではないんだなと思いました。

 

マリスはかなーり優秀なエスペラントと思います。

でも、たぶん彼の根っこの歪みって、両親を失ったことが大きいよね。

 

ルヴィ様は、ちゃんと冷静に見ておられます。

 

誰かの犠牲の上に成り立つ平和を否定するのは、これ以上犠牲を出したくないというよりも、自分が喪った大切な人への自身の痛みではないかと思います。

 

ファフナーはそれこそ、そういう人はそこらへんにゴロゴロいるので、辛いのはお前だけじゃねーよと大人は彼に銃を突きつけるわけですが

 

はい。ここで(勝手に)旧人類代表、史彦さんの登場です。

8話のマリスとの会談を見て、史彦さんの自制心のすごさやアルヴィスでダントツです。

 

きっと史彦がいなかったら、アルヴィスはもっと早くに違う道を進んでいたかもしれない。

でもね、史彦って人格者だと思いますか? 確かに見かけで敵意を剥き出しにしている人たちに比べると、大人です。

でも、彼は、きっともっと人間くさいと思いました。

 

ファフナーってやっぱりうまいなあと思った。

ここに来て、史彦の陶芸の表現していたことがやっとわかった。(遅いですか)

 

史彦の陶芸は、紅音さんのやっていたことを真似てというか、引き継いでいます。

でも、彼、ヘッタクソですよね。全然綺麗な器が作れない。

今回、土を前ににらめっこしている史彦さんを見て、ほおと腑に落ちました。

あれは史彦さんのこころを表していたんだなあ。いつも歪んでしまう。(すみません、単に不器用さんなんだと思っていた)

 

なにせ史彦さんもファフナーではかなり大変な人です。

愛する奥さん(紅音さん)が、フェストゥムに奪われたばかりか、人類初のフェストゥムと対話した人として、紅音さんの外見と記憶を取り込んだフェストゥム(ミョルニル)まで登場するし。

息子(一騎)は息子で、戦闘に出したくないけど出さざるを得ないし、自分より速い速度で死に近づいていくし、お母さん譲りでパイロットとしての腕はピカイチだし、挙げ句の果てには紅音さんと違った意味で非人間化しちゃうし。

なんていうんですか。普通に亡くすよりもある意味辛い展開。

 

弔うこともできず、でもどんどん遠くなっていくし、

大切な人を奪われる体験って、史彦はまた複雑な事情のもとでめいっぱい抱えている。

 

そして、その上で成り立っている自分の命や、島の人々の命運を、重い責任で担っている。

想像ですが、史彦は自分は幸せになっちゃいけないという思いを、千鶴さん同様背負ってきたのではないかと思います。

千鶴さんとは、そういう意味で、背負ってきたものの重さが似ているのかもしれない。

そんな二人が、やっとなんか人並みの幸せを願ってもいいかなと思い出したところで、あれですよ。(ファフナーはつくづく残酷)

 

器の歪みは、史彦のこころの揺れを表しているのだと思う。

きっと彼はフェストゥムを許してはいないし、憎んでもいるだろうし、自分も責めているだろうし、ドロドロとしたものもたっくさん抱えている。

でも、それを表には見せない。

 

それは、彼が人格者だからではないと思います。

それよりは、月並みだけれど彼を支えてきた多くの人によってそこを保っているんじゃないかな。

それは紅音さんしかり。千鶴さんしかり。他にもたくさん、たくさん。

 

真矢が史彦にお礼を言うシーンは、だからとっても良かったなと思いました。そういう小さな積み重ねが、史彦に憎しみで動かずにいられるのだと思う。

 

つまり

マリスは旧人類を馬鹿にしていますが

マリスも史彦と立ち位置的には大して変わらないと思いました。

(若い頃の史彦は、マリスみたいに若く突っ走っていたかもしれないし)

 

史彦のバックヤードは推測もありますが、それくらい人のこころって多層。

憎しみがあっても、それだけで動くとは限らない。

憎しみを隠して、というか優先順位を低くして、動くことだってできる。

 

はい。ここでエスペラントの危うさにやっと戻ってきました。

 

エスペラントは、フェストゥムと対話できる新人類です。

フェストゥム同士だけでなく、エスペラント同士も、通常の人とは異なるかたちでコミュニケーションが取れます。

会話しなくても、分かり合える。

 

これって、便利なようでめちゃくちゃ危ういと思いました。

なんでって、人のこころはとても奥深いから。

 

ときには相手に見せない自分もいるのです。史彦さんみたいな人もいるんです。

自分で自分に気づかない自分だっているのです。(初期の「自分なんかいなくなったほうがいいんだ」と思っていた一騎のように)

表面に見えるだけが、その人の全てではない。

 

セレノアたちは、とてもうまく美羽の記憶から弓子さんたちを再現しているけど、表面しか模倣されていない。(完全再現することが目的ではなかったにせよ)

美羽は年齢よりも早く成長しているし、昔の一騎たちよりもたくさんのことをわかっているけれど、総士に「フェストゥム人間」と言わしめてしまうどこか危うさがある。

単に身体を大きくしただけでは、こころは育たない。

経験という積み重ねもそこには影響してくる。

 

そう思うと、新総士が結果的には周囲の人にいい感じに感化されて、独自の道を自分で歩んでいる気になっているのは、なんか、面白いですね。

ベノンに洗脳されてもおかしくなかったのに。

あ、今思ったんだけれど。総士は偽竜宮島で育つ前に、一騎に育てられていたのも実は彼の基底を作っているんじゃないでしょうか。いちばん最初の養育者の関係が良いことは、こころの基盤を作るのにとても大事です。

(今、絶讃お父さん(一騎)に向けて反抗期中ですが)

 

総士の美羽への「怒れ」はとっても良いなと思います。

 

なんだか、書いていてだんだん脈絡がなくなってきたのですが

エスペラントだろうと旧人類だろうと、相手から学ぶことはきっとあるはずです。(ルヴィ様も美羽ちゃんに言っておられた)

そして、わからないことをわかり合おうとするために対話が必要なんだと思う。

 

マリスはもっと、両親を亡くした悲しみや怒りを誰かに出せたら良かったんだろうな。

美羽とマリスの物語以前(EXODUS~BEYOND)の様子は描かれていませんが、二人は能力も高いし仲が良かったんだろうなと匂わされています。

でも、そういうこころの奥底にあるような感情については、エスペラント同士でもなかなか通じ合える事柄じゃなかったのかなあ。

 

美羽は「お話ししよう」が口癖でしたが、お話しするって、簡単なようでとてもむずかしい。

一騎が初期ファフナーで「総士と話がしたい」と言ったとき(懐かしい、最初のザルヴァートル化。ザルヴァートル化ってそんなにポンポンするもんだったけと、今回思った)、乙姫が「会話は人と人が離れているからできる」(細かいセリフは忘れましたので、そういうニュアンス)と一騎の選択を肯定します。

 

それは、幼い頃の総士が一騎を同化しようとして傷つけられたのと似ていて。

お話しするのには、必ず対象がいる。自分と違う他者がいるからお話しできる。

 

エスペラントの能力は、便利なんだけど、人と人との障壁を払ってお話しできようとする。

でも、本来はその境があるから、明確に相手が違うことがわかる。

 

対話は、同じ意見ではなく、異なる意見でも良いのです。むしろそのほうがいい。

そして、意見が違っていても、それに屈服するのとはまた異なる。

 

対話ってむずかしいな。

ファフナーが描くフェストゥムと人間との対話はどんな結末を迎えるんだろう。

 

来主のように、フェストゥムでも人に触れて心が育つこともすでに表現されている。

マレスペロ(どんどん成長している。最終的にはおじいちゃんになっちゃうんじゃなかろうか。余計なお世話ですか)の痛みが、なんらかのかたちで癒されたらいいのになあと思っちゃったりもします。

 

結び

なんか書いていたら、だんだん脈絡がなくなってしまいました。

ファフナーは、いろんな視点から楽しめるからそれも面白いなあと思います。

 

もし、これを読んだ人がまた賦活されていろんな考えが浮かぶと良いなあと思います。

ここまでお読みくださいましてありがとうございました。

 

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