いつもはドラマは録画してあとからゆっくり見る派なのですが「お正月だし、まあいいか!」とめずらしくリアルタイムで観ました。
お正月にスペシャル版で帰ってくると告知されてから、ずーっとずーっと楽しみにしていました。
年明け最初の感想は、ドラマ「逃げ恥」スペシャルからはじまります。
※原作の漫画は全巻&このドラマのモデルになっている10&11巻も読了済みです。そのため、原作の漫画についても触れています。(つまり原作漫画のネタバレも若干含みます)
※ドラマは前作もリアルタイムで視聴、昨年もコロナ再放送版でばっちり復習しました。わたしは普段ドラマはそんなに観ないので、こんなにしっかり観ているドラマはめずらしい(それはどうでもいい)
帰ってきた逃げ恥メンバー
ほぼみんな勢ぞろいで嬉しいー。
ガッキーみくりも源さん平匡も、相変わらずかわいいー!
ゆり子さん百合ちゃんは、相変わらず美しいー!
どうでもいい振りだけで登場する茅(みくりの兄)もいとおしいー!!(原作キャラを踏襲しつつ茶目っ気がある感じで密かに好きです)
ドラマ逃げ恥の、ほっこり温かい雰囲気がそのまま続いています。
一方で、前作では「ムズキュン」というのがドラマの立ち位置で結構占めていたけど、今作は「妊娠」「出産」「育休」と、結婚よりもさらに現実的なことがテーマに置かれたので、キュンキュンするだけじゃないこの作品本来の持ち味が活かされたと思う。(海野つなみ作品は、ウィットに富んでいるのです)
その分、ムズキュンを期待していた人には、ちょっと物足りなかったかもしれません。
まさかコロナも被せてくるとは、予想外でしたが。(前情報一切入れていなかったからびっくりした)
えっと、コロナについては後半に扱いますね。
懐妊→入籍→妊娠中&育休→出産
個人的に、原作のミュージカル調で始まるスタートがもしやドラマで再現されるのではと期待していたので、ちょこっと残念。(いろいろな都合で無理だったのかも)
そういえばドラマではまだ入籍していなかったんですね。
夫婦別性問題とか、そういうことも取り上げてくれてなんだか良いですね。
わたしは、その方面は経験者ではないので、妊娠とその期間中の仕事、育休などの細々としたことって、実際に体験されている方と温度差があると思います。
でも、社会上の法整備がやっと追いついてきても、現実はまだまだ厳しいことは、容易に想像がつきます。
みくりと平匡が「さも当然」として育休を取得するために奔走するのと、沼田さんたちが助け舟を出してくれつつ灰原さんを言い負かすのは、なんだか世の中を応援してくれているようで嬉しかった。
沼田さんが言っていた、誰かが休んでも仕事が回るように日頃からしておくこと。当たり前のようで、現実はとても難しい。でも、そもそもそういう発想でマネジメントしていくことが大事。
先日読んだフィンランドの本で、すでにそうやって実践している国だってあるんだから、きっと不可能ではないはず、と思ってしまいました。発想の転換。
あと、子どもが生まれる前から、もう子育てに向けて始まっているんだなあと。
妊娠中の体調の変化は個人差があると思いますが、それくらい子どもが生まれることって実は大変なことなんだよと、散らかった部屋(それでも綺麗なほうだと思いますが)は物語ってくれているようでした。
臨月の尿もれを、これまでドラマで描いたことがあっただろうか。
コロナ禍を描く
なんだか、この逃げ恥もまた、コロナ禍の影響を受けた作品なんだなあと思いました。
原作は、コロナ禍突入前に完結しているので、コロナに触れた子育ての葛藤はドラマオリジナルのものです。
別に原作では触れられていないのだから、ドラマでもそれについては触れずに作ることもできたはずです。
でも、ドラマ制作はコロナ禍真っ最中に(今もさなかですが)始まり、撮影だって厳重体制で行われたはず。赤ちゃんをドラマに登場させることだって、現在ではとてもリスクの高いことです。
敢えてそこに踏み込んだのは、現代社会のテーマを背景に孕んでいる逃げ恥としては避けて通れなかったのだろうなあ。
そう、逃げ恥は、決してムズキュンなだけの作品ではないのです。背景には、現代社会が抱えるテーマを扱っているのです。
結婚、雇用、セクシャルマイノリティ、出産、セクハラ……etc.
昨年、これも再放送で松嶋菜々子さん主演の「やまとなでしこ」を久しぶりに見ました。(年末に、録画してあったのをやっと観た!)
松嶋菜々子さん演じる桜子さんは、令和の時代に見ても美しかった。
でも、令和の時代にあのストーリーはもう不可能ですね。あの時代だから成立したラブストーリーです。
逃げ恥がドラマ化されたのは平成の終わりごろですが、今回のドラマスペシャルは、令和突入にふさわしいという気がする。そういう意味で、令和の発表からドラマが始まったのは秀逸。
令和が終わる頃にこの作品を見た人が「そうか、この頃は夫婦別性もできなかったし育休取得もこんなに大変だったのね。コロナってほんとうにこんなのだったの?」と思えるような時代になるといいですね。
*
率直にいうと、コロナが作品のなかに登場することで当初期待していたワクワク感はしぼんでいきました。
なんて言ったって、生々しすぎる。
なぜなら、わたしたちは今まさにコロナ禍の真っ最中。第3波の真っ最中。折しも放送日(1月2日)は、政府に緊急事態宣言の要請を都と3県がした日でもありました。
エンターテイメントが為す、非日常感が日常に侵食されていく。
それがコロナなんだろうなあ。
子育てに不安な親がいて、会社が続いていくのか通勤は大丈夫か不安な人がいて、飲食店はこのまま潰れてしまうんじゃないかともっともっと不安で、不安なこころがさらに不安を煽って、ハグや出会うという当たり前のことが当たり前にできなくなって。
ただでさえ初めての子育って大変なことだらけなのに、コロナが加わると、みくりと平匡のふたりでもこんなに翻弄されるんだなあと思いました。
あ、あと。灰原さんが終盤株を上げたのは意外な展開(笑)。原作にはない動きでした。
緊急事態に、人がどんな一面を見せるのかも、コロナが浮かび上がらせたものです。
ドラマから考えたこと
しかし。逆に見えてきたこともあります。
たぶん、根っこはおんなじなんだ。
平匡さんがみくりに「全力でサポートします」と言ったときにみくりが怒るシーンがあります。
自分だってわからないことだらけだと。一緒にやっていくものじゃないかと。
そして、平匡さんは「理想の父親」になろうと奔走します。
はじめてのことに遭遇したとき、みんなわからないことだらけ。
それは、妊娠・出産、子育ても、コロナも一緒じゃないかしら。
コロナのパンデミックは、世界規模でここまで世界中せーのではじめてを体験することはこれまでなかったことだから、インパクトもその分大きいけど。
なんでもはじめては、みんなわからないことだらけ。
右往左往するのも当然。不安になったりいつもならしない失敗をするのも当然。
入念に準備したつもりでも、それがうまく立ち回らなくなるのも、起こり得ること。
子育てとパンデミックを一緒にするのは変かもしれないけど、そうやってミクロでマクロで、わたしたちははじめてを経験する。
そして経験の積み重ねは、トライ&エラーでより良いものへアップデートしていくことに繋がる。
いま、まさにその真っ最中なんだなあと思いました。
おまけ:百合ちゃんと風見さん
わたしは原作もドラマもこのカップルが大好きなのですが(カップルと言っていいのかどうなのか)
ドラマでは、原作よりもさらにぼかした感じで終わりました。
風見さんは、なんだかこのまま独身で生きていきそうな雰囲気が漂いはじめています。
「別にそういう生き方だっていいじゃん」的な。
百合ちゃんとも、付かず離れずな距離感を保ってくれるといいなあ。最後のふたりだけでリモート会話をするシーン好きだった。
原作もそうなんだけど、この二人の名前で定義されない関係性って良いなあと思っています。
はい、わたしは密かにこの二人推しです!
恋人とかカップルとかそんな次元にとらわれずに、ゲラゲラ笑って素の百合ちゃんでいれば良いと思うの。そして風見さんはずっとそんな百合ちゃんに惹かれていれば良いと思うの。
めちゃ個人的願望です。
結び
公式サイトを覗いたら、新型コロナウイルスの出生後早期の新生児の対応について、外部リンクが貼られていました。
きっとコロナを扱うことは賛否両論あったと思うのですが、こういう時だからこそ、こういう時期に生まれてくる赤ちゃん、そして子育てをされる方へのエールにもなったら良いなと思いました。
「あなたたちは、世界中がとっても大変なときに生まれてきたんだよ」と、いつか笑って話せる日がくることが、1日でも早く訪れますように。
関連情報
▽ドラマの公式サイト
▽原作漫画の感想
以前ドラマ化されたことで話題になった「逃げるは恥だが役に立つ」(略称「逃げ恥」)一旦は完結しましたが、その後のみくりと平匡さんを描いた続編が、今回完結しました。個人的に続編は完全なるファンサービス[…]
▽文中関連記事(フィンランドを参考にしてみる)
2018年、2019年と幸福度ランキングで世界1位になったフィンランドについて、フィンランドの大学で修士号を取り、現在はフィンランド大使館で広報の仕事に携わる著者が解説している本です。個人的にフィンランド[…]
▽今回のドラマの原作漫画はこちらです。